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□雨
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あたしが部屋に入ってしばらくしてから、ようやくチェスターは、暗い瞳であたしを見た。
そして、フラフラとあたしの方によって来て…。
ギュッ…っと抱き寄せられる。
チェスターの身体は、融けてしまいそうな程、熱い。
「…ちょっと!!いきなり何すんのよ!!」
そう言って、見上げたチェスターの表情は、やっぱり暗く翳っている。
「……」
弓を引く腕は、力強く、逞しくて。
こんな状況なのに、ドキッとしてしまった。
けど、違う。
これは、愛情表現の抱擁ではなかった。
体温を、確認するための抱擁。
しばらく、抱き寄せられて…そして、離された。
「……悪りぃ」
あたしの頭をポンポンと軽く叩いて…そして、部屋から出ていこうとした。