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□FIGHTING OF THE SPIRIT
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大聖堂は先程あったことが全て夢だったかのように静まり返っていた。


ただ、自動演奏のパイプオルガンの音楽と、二人分の足音だけが広い、この広いホールに響き渡る。



大聖堂の教壇のとある場所で、リュウは立ち止まった。


「…………」


…裏で見ていたから、知っている。
そこは、クラリスさんとティガさんが、ハバルク神父に消された場所だった。


胸が張り裂ける想いだった。

リュウは、知らない。
自分の育ての親が、ハバルク神父であることを。
自分の世界が、エバ教を介してしか映らないことを。
自分が…信じるべき物がわからなくて揺らいでいることを。

知らない。
まだ教えては、いけない。


「………そろそろ、やろうか」

項垂れていたリュウは、顔を上げて、真っ直ぐにこちらを見た。

…良い瞳だ。
彼になら、この世界の全てを預けられる。


「………行きますよ」




いよいよ、戦いが始まる。


カラダを駆け巡るチカラがヒトのカタチを破り、ドラゴンへと変化する。


彼は、まだヒトのカタチをしていた。

「……全力で、かかってきなさい!!」

その言葉を聞いたリュウが、剣を掲げて大きく跳躍する。


「………やあっ!」


キィン!!という甲高い金属音が響く。
竜の固い鱗の前に、物理攻撃は大した効果はない。

「くっ…!!」

しっぼに薙ぎ倒されて、リュウは苦痛に顔を歪ませた。
口から滴る血を拭い、ただ私だけを見つめる。


「これが…私の全力です!!」


ブレスを吐く。
それを受けるリュウのカラダが少しずつ発光していくのが見えた。
サブリミナルのようにちらつくシルエット。

それは、まさしくドラゴンの姿。


今、まさにリュウはヒトのカラを破り、大きく羽ばたこうとしているのだ。
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