壊れそうな本棚
□貴方に逢えて、良かった。
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気が付いたら小さな部屋の中に、私は居た。
ロックマンに倒されたのに、何も無かったかのようだった。
『いずれここへロックマンがやって来るから次こそは倒すんじゃ!!』
スピーカーから響く、聞きなれた声。どうやら幸か不幸か、皆復活したようだ。
…もちろん、ナイトマンも。
「…何故、私はここに?…ロックマンに…倒されたはずでは」
「ワイリー博士が、蘇らせてくれたのよ」
厳密には、私達のためではないけれど。
でも、再び貴方の声が聞けて、嬉しかった。
「そうか…」
「束の間の命だろうけど、貴方に謝りたくて」
束の間と言った理由は、再びロックマンと戦うから。
そんなこと、わかってる。
貴方に声を掛けたのは、伝えたい言葉があったから。
「貴方を護ってあげられなかった、貴方のそばにいられなかった……ごめんなさい」
「………どうか自分を責めないでくれ、君を護ってあげられなかったどころか、私の武器で君を殺めてしまった」
「大丈夫よ、気にしてないわ」
だって、貴方のせいじゃないじゃない。
どこまでも優しいのね、ナイトマンは。
もっと貴方の優しさを噛み締めていたいのに、時間的な余裕はもう、無かった。
「……多分、再びロックマンと戦うことになるわ」
「ケンタウロスマン………」
心配そうな彼に、自分がまだ愛されているのを知って嬉しくなった。
「…正直、勝てるかわからない……ううん、彼はきっと私たちを倒して世界を救うわ…」
私は見てしまった。ロックマンに倒されるときに、彼が泣いていたのを。
愛する人を奪われた恨みだけで戦った私を、敵である私を、泣きながら倒した姿を。
愛する人を奪われたのは確かに辛くて、苦しくて…。何かを恨まずにはいられなかった。
だから、私はロックマンを恨み、憎んだ。
でも、彼は私を憎むどころか、泣いてくれたのだ。
ロックマンが私達の事を知っていたら、別の結果になったのかもしれない。
そう思うと、最早私にはロックマンを恨むことは出来なかった。
愛する人を倒したのが彼で良かったとすら思った。
少なくとも、楽しんで貴方を破壊したような奴だったら、私はきっと貴方と話している今ですら穏やかでいられなかったでしょうから。
色々と、月日を重ねて私は変わってしまった。
ただ、それでも貴方を好きだという気持ちだけが変わらずに、私の中に存在し続けていた。
貴方を変わらずに想っていけたのは、私の誇りになる。必ず。
「……例えバラバラに破壊されても私は忘れない。貴方のことを…愛しい貴方のことを……だから、願わくは貴方も覚えていて。貴方をこんなにも愛した女がいたってことを。破壊されても、私達は…私達の心は一緒よ、離れはしない」
さよなら、大切な人。
「さようなら、愛しいナイトマン」
私は、そう言って通信を切った。
そして、入り口で立っていた彼に声をかけた。