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□雨
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ずっと、気になっていた。
ずっとずっと、気になっていた。
雨の日になると、クレスの表情が暗くなる。
チェスターが、クレスと友達だって言うからチェスターに訊こうかとも思ったけれど、チェスターも、同じ顔をする。
二人に、雨に関する共通の記憶があるのは、誰の目にも明らかだった。
「チェスター、夕飯だよ〜」
今日は、いつもより早めに宿をとった。
たしかに、雨だったのもある。
でも、それ以前にクレスとチェスターがおかしいのが原因だ。
あたしは、宿をとるなり部屋に引きこもってしまったチェスターを呼びに、チェスターに宛がわれている部屋に入った。
薄暗いのに、明かりすらついていないこの部屋は、まさに今のクレスとチェスターのようだと、あたしは思った。