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□FIGHTING OF THE SPIRIT
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「…は…ははっ…愉快…ですね………」
吐いた台詞とは裏腹に、顔は自虐的な笑みを浮かべていた。
…こんなはずではなかった。
こんなはずでは………。
自分は、彼と戦い、彼の中に眠る竜の力を覚醒させようとした。
竜の力を目覚めさせるには、同じ力をぶつけるしか、ないから……。
でも、きっと、それは言い訳だ。
自分は、そうやって…罪から逃れようとしただけだ。
エバ教が、罪深いことを知りながら、そこから脱することが出来ずにいた。
…孤児だった自分が、ハバルク神父に拾われてから、自分の価値観はエバ教の教えに合っているか、否かでしかなかった。
今更、変えることなど出来なかったし、育ててくれた人を裏切れなかった。
きっと…こう思っていること自体が、罪なのだ。
真実を取って、育ててくれた人を裏切ることも、真実から目を背けて、仲間と対峙するのも辛いから…だから、選ぶことを放棄した。
リュウの中に宿された力を解放して、消えようと思った。
だが、しかし。
リュウの力を覚醒させるはずだったのに、力の暴走をしたのはリュウではなく、自分自身だった。
思いの外にリュウの底に眠る力が強すぎたのか、覚醒させようと躍起になるあまり自分は力を制御出来ずに暴発させてしまった。
リュウたちが、ボロボロになって、血で染まった姿を見たときに、ようやく我に返った。
リュウの傍らに落ちているドラゴンの形を模した宝石を、そっと手に取った。
「………ドラゴンズ…ティア…」
人の内情を色で示す不思議な宝石。
表だけの表情や、言葉ではなく、その人の内面を映し出す。
自分は、彼をどう思っているのだろうか。
また、彼は………?
「………僕から君への感情は何色だった?」
不意に響いた声に、ハッとする。
倒れていたリュウが顔を上げて、こちらを見ていた。他の三人は気絶したままだったが、竜の血族であるリュウは、同じ竜の血族であるレイの攻撃に対し、耐性を持っていたようだ。
言われて手の中のドラゴンズティアを覗き見ると、虹色に、煌めいていた。
「…七色に…光ってますよ…」
「…そっか……」
リュウは、倒れたままの仲間に薬を与えながら、小さく笑った。
それが終わると、リュウはゆっくりと立ち上がった。
「………それじゃあ、行こうか」
「何処へですか?」
リュウは、しっかりと自分の瞳に確かな意志を宿しながら、言った。
「君と戦っている合間に、感じたよ。新たな竜の力をね。…ただ、こんな狭い場所で僕まで竜になったら大切な仲間まで巻き込みかねないから、出来なかった…」
対峙している場所を見ながら、彼は呟いた。
戦局を冷静に判断出来るようになった事に、内面も確かに成長しているのを感じさせた。
「……祈りの時間は終わったんだから、もう人も居ないだろうし、大聖堂で決着を付けよう…」
「ええ…わかりました」
リュウと、私は部屋を出た。