壊れそうな本棚

□今まで気付かなかった大切なもの
1ページ/1ページ

最近、人手が少ない。

地球は荒廃し、イレギュラーハンターも事実上解散に追い込まれ、ほんの一部のハンターが辛うじて活動を続けている有り様だ。

私はエックスやゼロ程じゃないけれど、ここでは古参の部類に入る。
こんな誰もが不安を抱く状況下だからこそ、私は、私の下にいる後輩の支えでなければいけない。

沢山のディスクの山を軽く見る。
大体の量と作業終了時間を予測して、後は自力で何とかなりそうだと判断した。

「レイヤー、パレット…ここまで手伝って貰えたらもう大丈夫。貴女達は休んでもいいわよ」

「でも、半分も片付いてませんが…」

「ここで無理を通して貴女達が倒れる方が問題だわ。私は慣れてるから大丈夫よ」

自分より、後から入ってきた子達に見苦しいところは見せられない、決して。

二人の後輩が出ていったのを確認して、私は身体を伸ばした。
と、同時に誰かが部屋に入ってきた。


「頑張ってる君に差し入れに来たよ」

「エックス…」

エックスが、オイルの缶を二つ持って私のデスク近くまでやって来た。


「君がいつも頑張っているのはわかるけど、たまには休まないと倒れるよ」

「でも、貴方達が頑張っているのに、私だけ休むわけにはいかないわ」

「君が倒れたら、誰が俺をナビゲートするんだ?」

「あの子達がいるじゃない」

エックスは、苦笑した。


「君は無茶をするから心配なんだよ。疲労が身体の限界を超えていても気付かないで仕事するタイプだからね」

「………貴方も、無理をするタイプじゃない。ましてや戦闘型なんだから、私は貴方の方が心配よ」

互いに互いの方が疲れていると言って聞かない。

「ハハッ…似た者同士だね」
「フフッ、そうみたいね」

たまにはこうやって、他愛もない話をするのも良いなって私は思った。
最近は業務関連の話しかしなかったから…。


「じゃあ、二人で休もうか」
「でも、仕事が遅れるわ」
「俺も手伝うよ。一人で一時間の仕事なら二人で30分で終わるよ。…いや、君の方が25分で終わるかもしれないな…それに後輩は優秀なんだろう?信じてあげなよ」


「…そうね」


私はエックスの手をとった。
ゆっくりと立ち上がる。
しばらく座りっぱなしだったからか、関節部分がギシギシ痛んだ。


二人して休憩室に移動して、ベンチに腰を掛けた。


「……君が頑張り屋なのは知ってるけど」
「えっ?」
「自身で何でも抱えないでもっと頼ってくれ、でないと…」
「……何よ?」

エックスは、赤面して言った。

「君を守りたいのに、俺が君に守られてしまう。もっと君を支えていきたいのに」

……その言葉は、私が後輩たちに抱いている気持ちに似ていた。

「ご忠告、有難う」

やっぱり、独り善がりじゃ駄目ね。
私たちは一人では生きていけないんだから支えあわないと。
同じ仲間なんだから。

「貴方は十分私を支えてるから大丈夫よ。貴方こそ全てを抱えちゃ駄目よ」

「そうだね」

オイルを飲み干して、さっきまでいた部屋に戻る。

約束通りエックスは手伝ってくれて、思ったより大分早く作業は終了した。

「手伝ってくれて有難う」
「どういたしまして。また何かあったら頼ってくれ。」

「ええ、そうするわ」

何か、自分一人で無理をしていたのが馬鹿らしくなるぐらい、気持ちが楽になって…なんか、嬉しかった。


■□■□■


そして、翌日。

「レイヤー、パレット…これを手伝ってもらえる?」
「はい!」

「わかりました」


何故か、二人が嬉しそうに見えた。
仕事を片付けてから二人に理由を聞いてみたら返答はこうだった。

「私達でも、エイリアさんの役にたてたのが嬉しいです」
「エイリアさん一人が頑張っているのに、何も出来なくて歯がゆかったですよ〜」

ああ、そうか。
そうなんだ。

「これからは、もっと二人の力を借りるわ。宜しくね」

「「はい!!」」

私たちは笑いあった。

自分を支えている人を支えて、互いを補いながら進んでいこう。
私たちは、仲間なんだから。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ