遙かなる時空の中で4
□タナトス
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黒き獣を、この時初めて奇麗だと思った。
千尋が半ば強引に連れて来られたの場所は、ぞっとする位に咲き誇る笹百合の中だった。
其処で戦で死ぬ姿を見たくないと、アシュヴィンは千尋に告げた。
曲線を画く、たおやかな花をひとつ髪に飾られた時、捕らえられた気がした。
今ならきっと何をされても逃げられない。
アシュヴィンは自分の唇に指で触れてから、千尋の唇をそっとなぞった。
ぶ厚い皮ごしなのに、それだけで唇が熱を持った気がする。
そう遠くない未来、この手に委される予感がした。
■〆