Gem・novel

□彼と彼女の事情(立海的報復理論)
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晴れ渡った空には、夏を告げる入道雲がそびえ立っとって。


射るような灼熱の日差しにジリジリ照らされて、正直立ってるだけでもしんどい。


日陰すらないテニスコートに整列し、ネット越しに対峙しとるんは柿の木高の一年生部員で。


親交を深める為だとかなんとか、訳の分からん理由で練習試合をする羽目になっとった―…







「せっかくの休みを潰しよって」



「俺も彼女とデートの予定だったんすよ、仁王先輩は…あっ」



「聞くまでもない、デートが潰れた確率は100%だ。応援席に姫が来ているからな、赤也…お前が仁王の逆鱗に触れた確率も知りたいか?」



「いえ、いいっす!」




相変わらずの軽口を叩く赤也を睨み付ければ、開眼した参謀が冷たく笑っとった。


(参謀もデート潰されたみたいじゃの、静も居るし…ん?桜も居るんか)


相対した相手に背を向け、応援席を見渡せば日傘をさした3人が手を振っとって。


視線を右にずらして見れば、真田も不機嫌オーラを垂れ流しとる。



「ほんについてない奴等じゃ、参謀と真田も敵に回すとはの」


「仁王くん、試合前に私語が多過ぎますよ。話はベンチに戻ってからに」

「なあ、あの白い日傘の女可愛いくねぇ?」




俺をたしなめる柳生の声を遮ったんは、目の前のピアスのやたら光る奴の声で。


俺が話しとるからいいと思ったんか、応援席を指さして女を物色し始めよった。




「俺ならピンクのワンピースの娘かな」


「じゃあ俺は黒の傘の娘にするわ、試合終わったら誘おうぜ」




(白の日傘にピンクのワンピース、黒の…まさか)



目の前の奴等のナンパ相談を整理して、浮かんで来たんは姫達で。


慌て振り返れば…白い日傘を振る姫とピンクのワンピースの桜、黒の日傘をさした静が居った。


(この阿呆共、抜けてるんは顔だけじゃのうて頭も足らんとは)


最高の彼女と思っとっても、目の前で大した事のない奴にナンパされるなんてもっての他じゃから。


どうにかしてやろうと横を見れば、黒いオーラをまとった参謀と真田が見えた。




「柿の木高校の顧問は居るんか?ものは相談なんじゃが、オーダーは今から変えても構わんかの」


「「仁王!?」」




ベンチへ大声で声を掛ければ、驚いた表情の監督であろう男がこっちを見て立ち上がるから。


ええじゃろ?と睨み付ければ、壊れたオモチャみたいに何度も頷いとった。



ザワザワ騒がしくなる奴等を睨み付けながら俺は口角を吊り上げてみせて。


(さて、きっちり教えてやろうかの、俺達の彼女に手を出そうなんぞ一億光年早いぜよ)




慌てるブン太とジャッカルをどかして、ピアス野郎に向き直った。




「お前さんとやりたいんじゃが、オーダーは何かの?」



「お、俺はあいつとD2です」




そう指指したんは、静を選んだ奴で。


俺は参謀の肩に腕を回し共同戦線を持ちかけたんじゃ。




「参謀は俺と組むんで問題なか?」



「そうだな、それが一番良いだろう。弦一郎はどうするのだ?」




参謀と俺が真田の方を向けば、帽子を被り直しながらゆっくりと口を開いた。



「お前のオーダーは何だ?」


「俺はD1…」



モゴモゴ口ごもる奴を一睨みした真田は、赤也の襟首を掴みながら幸村に向き直って。


暴れる赤也を無視して話を進めとった。




「精市、俺がD1で構わんか?」


「赤也とかい?別に構わないよ…全力で行くならね」



「決まりだな、気合いを入れんか赤也!」




イヤだ!と叫ぶ赤也の意見なんぞ聞き入れられる筈もなく、あっという間に新オーダーは決っとった。




「遊びで負けるより、全力で潰される方がいいみたいじゃからの。きっちりイリュージョン掛けちゃるよ」


「親交であっても、最低限のマナーは必要だ。今から教えてやろうと思うが、構わんのだろうな」



「容易く声を掛けられる女ではないと教えてやらんとな…男なら覚悟を見せんか!」



真田と参謀の逆鱗に触れるような阿呆は久しぶりじゃから、ブン太もジャッカルも柳生も苦笑いで。


一人幸村だけがオーダーを書き直しながら、楽しそうに笑っとった。




「S1は俺だけど、S2とS3はどうする?たまには柳生とブン太でも行ってみるかい?」



「分かりました、全力でお相手しましょう」



「だな、人の彼女に手え出すんなら天才的に格好よく勝ってからにしろい?」




騒めくというより青ざめた奴等を眺めて、つくづく皆良い奴じゃと思うんじゃ。


メンバー同士も彼女同士も仲がいいから、こんなんは日常茶飯事なんじゃが…この一体感が好きで堪らん。


そんな事を考えながら、止めをさすべくピアス野郎の顔を覗き込んだ。




「白い日傘の女は俺のじゃから手え出すんじゃなかよ?こんな痕まで付ける程俺に惚れとるしの」




俺のじゃと言い捨ててジャージの襟元を開き、昨夜姫が付けたキスマークを見せつけてやったらどよめきが起こって。


後ろを振り返れば、真っ赤になって暴れる姫が見えるから笑ってしもうた。



さて…阿呆でも分かるように、身体に刻み込んじゃるかの。



「覚悟しんしゃい?」




そう言い捨た時、試合開始の合図が鳴り響いた―…





【†彼と彼女の事情†〜立海的報復理論〜】 了



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Final+Heaven(マガジン名・Heaven's+Gate)様から頂きました。

素敵なSSとキスマークを見せる仁王イラスト!
たまらん(笑)

皆に大切に思われている彼女たちが羨ましい!!


りょうさん、講読者500人突破おめでとうございます。
これからも素敵(エロ含む)マガを楽しみにしてます。

SS&イラストと掲載許可
ありがとうございました♪



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