長編(本棚)
□具現化する剣
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今のこの時代、武器を持って戦う…なんてことはありえない。
だってこんなに平和な時間が流れているのだから。
かつての"私たち"が願ったものがここにはある。
それなのに今、私の周りで起こっていることに対して剣が欲しいと思う。
大切な人を、今度こそ守る為に。
4話『具現化する剣』
「興覇殿…?」
「無事か、伯言!」
甘寧は腕の中にいる陸遜を見る。
所々傷が出来ているのに気がついた。
犯人などわかりきっている。
目の前の男。
「よくも伯言に傷を作ってくれたな…」
怒りに震える甘寧に対し、司馬懿は冷静なままだ。
「ふん、そのようなこと関係ないわ。私が欲しいのは玉。そして陸遜自身だ」
「玉?」
先ほども言われたその言葉。
この際後者は聞かなかったことにするが。
陸遜は意味がわからず、ただ首を傾げる。
が、甘寧にはその意味が伝わったらしく、その手に持つ大きな剣を相手に向けた。
「ふざけるなよ。渡せるわけねぇだろ!」
剣を振るった時に起こった風。
恐らく先ほど感じたのはそれだったのだろう。
今更ながら彼に助けられたとわかった。