長編(本棚)
□懐かしき思い出
1ページ/4ページ
あの日、私たちは出会いました。
孫呉の中心たる建業、その城の庭で。
それは晴れたある日のこと。
2話『懐かしき思い出』
時は三国時代と呼ばれる中国。
魏、呉、蜀と三国に分かれた世。
ここ孫家の納める呉の地で軍師見習いとして勉学に励んでいる陸遜は書簡を両手一杯に持ち、廊下を歩いていた。
目指す場所は尊敬出来る上司でもある呂蒙の元。
(思ったより遅くなってしまいました…)
書簡室で頼まれたものを探している内に時間がかなり経っていた。
まだ孫呉に来てあまり日が経っていない陸遜。
毎日こうして小さなことからしているのだ。
と、急いでいる陸遜だったが、ふと目に入った庭の片隅。
そこに小さな雛が落ちていることに気が付いた。
陸遜は廊下の隅に書簡を置き、その雛の元へ行った。
よく見ると近くの木に小さな鳥の巣があった。
(直ぐに戻してあげないと…)