短編(本棚)

□花が咲き誇る様に
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あっ、そうそう。
その好きな子ってのはこの孫呉を支える若き大都督・陸遜。
あの周瑜さんと呂蒙さんをも超える知識を持ってるって話だ。

最初は突っつき難かったんだけどさ、話してる内に違うんだってわかった。
あの陸家出身ってことでお堅い存在と思ってた最初の俺を張り飛ばしてやりたいね。

俺が陸遜を好きになったのはたぶんあの時…ほんの数日前の出来事だ。

城の中庭。
そこに一つの影があって、行ってみたら陸遜がいた。
しかもその顔は涙で濡れていた。


「りょ…凌統殿っ!」


俺が来たってわかったらものすごく慌ててその涙を拭ってた。

――あぁ、そんなにしたら目が腫れちゃうっつの。

俺は陸遜の手を掴んで止めさせた。
だって真っ赤になっちゃったら可哀想でしょ?


「……みっともない所をお見せしました…」
「そんなことないって。泣きたい時には素直に泣いた方がいいよ」


俺よりも下にある頭をぽんぽんと叩いてやると、陸遜は照れくさそうに笑った。


(可愛い…)


たぶんこの時、もう落ちてた。
泣いてる理由は教えてくれなかったけど、きっと泣くほど辛い何かがあったんだろう。
だって陸遜はいつだって平静でいて、嫌味ばっかり言ってくる文官たちにも耐えている。

ホント、毎回陸遜に突っかかってるとこ見ると殴りたいよ。
といっても最近は陸遜を認めてきているのか、そんなことも減ってきたけど。

まぁ、とにかくこの時から俺は陸遜が好きになってたってわけ。
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