長編(本棚)

□炎の記憶
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悪夢――。
これはその類に分けられると思う。

私が覚えていない"私"と。
"私"が慕っていた"あの人"との、別れの瞬間。

炎に燃える大地と、人の焼ける臭い。
夢だって分っているはずなのに、気持ちが悪い。





1話『炎の記憶』





「あさ……」


早朝、鳥が囀る中目を覚ましたのはこの部屋の主たる陸遜。

この小さなアパートで一人暮らしをしている彼はまだ学生。
平日たる今日も例に漏れず、学校へ行く。
だが、いまだ寝ぼけ半分の陸遜は支度しながら昨夜見た夢を思った。

炎に燃える大地と、人が焼けてゆく光景。
夢のはずなのに暑さと臭気は本物のよう。


(最近、頻繁に見るような気がする)


最初は月に一度、それから週に一度、それは次第に回数を重ねる内に頻繁になっていた。
今ではほぼ毎日。

そんなことを考えながら陸遜は学校へと向かった。
今日は集会、と片隅に置きながら。





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