SS

□夏祭り
1ページ/5ページ


君の赤く染まってみえる頬は
あの花火のせい?


「夏祭り」




「エアリス、用意できた?」

俺はエアリスを迎えにエアリスの家を尋ねていた。


「んー…、ちょっと待って…」

と、部屋の中からエアリスの声。


「どうかした?」

そう聞くと、


「浴衣って、結構難しくて…」

と、困った声。


そんなエアリスの困った声を聞きながら、内心、俺は喜んでいた。


エアリスが今、着ている浴衣は俺がエアリスのために選んだものだからだ。


あの時は、『浴衣は着ない』なんて言ってたのに、結局着てくれた。


それがすごくうれしい。


そんな気持ちを隠すように、

「俺が着せてあげようか?」

と、冗談まじりに言ってみた。


返答は、

「…うん」


……!!!

りょ…了解された!!?


いや、一応着付けはできるんだけどな…?

過去の経験から女の子に着せるのは慣れてるけど…。


えーっと。どうしよう。


弱気な気持ちを隠して、

「本当にいいの?エアリス」

と、からかうように言ってみた。


「?」

返ってきたのは、ハテナ。


「えーっとだな、浴衣を着せるってのはな…」

と、戸惑う俺にエアリスは、


「帯、付けてくれるんじゃないの?」

と、不思議そうに言う。


そ…そうだよな。

帯だよな…。


「入ってもいい?」

と、聞くと、


「うん。いいよ」

と、エアリス。


部屋に入り、エアリスに目をやる。


帯が失敗してるものの、可愛かった。

すごい可愛かった。


ちょっと照れながら、

「に…似合ってるかな…?」

と、言われた。


なんだかこっちまで照れてきて、
「似合ってるよ」とは言ったものの、可愛いの一言が言えなかった。


お互いの照れからか、沈黙が続く。

ふと目を向けるとエアリスと目が合った。

「ふふっ」と笑うエアリス。


場の空気を変えるように、

「じゃ、帯直しますか!」

勢いよく言った俺に


「うん」とエアリスが可愛くうなずいた。


「じゃ、帯一回外すよ?」

後ろに回って帯に手をかけた俺に、


「う…うん」と、胸元を抑えるエアリス。

ま、はだけちゃうからな…。

俺としてはそれはうれしいんだけど。


そんな不謹慎なことを考えていた。


…帯がほどけたら浴衣ってはだけるんだよな…。

ということは、絶対に崩れないように着付けないと!


俺意外に見せたくないし。


そんなことを思いながら帯をほどく。


そんな俺に、エアリスが疑問を投げかけてきた。


「ねぇ、なんでザックスは着付けできるの?」


純粋な疑問なんだろうけど…俺にとっては爆弾投下だった。


昔の…。

エアリスに会うまでの…、俺の行動のおかげで手に入れたこのスキル。


今回は裏目に出たな……。


「う…うん?なんでそんなコト聞くのカナ?」


にっこりと微笑みながら聞く俺に、


「ただ単に、疑問だったの」

と、エアリス。


「ミッドガルで少年期を過ごしたからカナー?」

と、ごまかした俺に、


「?」

と、エアリスは不思議そうだが、この話はおしまい!

すっごく胃に悪い!


そんなこんなで、帯を締め、浴衣エアリスの完成だった。


「ふふっ」と笑い、鏡の前で、くるっと回ってみせるエアリス。


エアリスの髪の香りに、俺の心臓が騒ぐ。


「じゃあ、行くか」

と、聞くと


エアリスは笑顔で

「うん!」

と答えた。


可愛すぎだろ…。


心臓が騒ぎっぱなしで困る。




.

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ