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□drift
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『今日の関東地方は快晴です!ようやく梅雨が開けたようですね』


俺はどんな時もアナログ派かもしれない。


休暇の日でも昼前には起きている。


本当は夕方位までだらだらと寝ていたい所だが、変に体調を崩していては仕事に支障が出る。


…この辺は自分でも生真面目だなと思う。


『では今週の邦楽ランキングベスト100です!どうぞ!』

ベッドサイドに置いてあるラジオがさっきから勝手に喋っている。

……ただかけっぱなし


(恋愛においても流されっぱなし…)


誰かが俺の心に針を刺す。



日中…せめて休暇の時はなるべくテレビは点けない。


普段、嫌と言う程事件に接しているのにわざわざテレビを点けて、自らうんざりする必要もなかった。


珍しく有給が貰えたから普段の休暇二日に加えて、四日連続の休暇にしてみた。


とはいっても何をする訳ではないし、これといって大した予定もなかった。


ただ一人で住むには少し勿体ない位のこのマンションで、一人淋しく過すだけ。


マンションはちょうど東京と神奈川の境目、登戸にある。
周りは低い山や多摩川しかないが、駅を少し離れればまあまあ住みやすい。


俺はつい余計な事を、このマンションを借りる時に思っていたらしい。


(あんまり狭い所だとあいつが来た時に何かと手狭になるかな……?)



意識的に食器も2つ


タオルも2人分


ベッドはダブル


飯も2人分以上


(無駄だろ?自分で自分の首絞めてどうすんだ…)



いくら待ってもあいつは……薫は来ない。

薫は自分勝手だ。


家に来る時だってアポなし、いつも突撃訪問だ。


昼間俺が家にいれば食い物をあさっていき、夜中俺が疲れて寝てれば、ベッドの中に潜り込んでくる。



何をする訳でもなく

何かする時もある。



やっぱり俺は波のようにただ流されるだけ。



行き着く所も……宛もない…。




(気持ちも泡に溶けてなくなればいい………)
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