K-on!

□ひとりぼっち
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いやだ!!!


彼女はそう叫んで泣きじゃくる。
綺麗な黒髪を振り乱して、いやだいやだと、譫言のように呟く。
彼女はなにを思ってそう言うのだろう。
私のいない未来が、不安で怖くてしかたないのだろうか。
今、なぜか私は冷静だ。
私だって悲しいくせに、なんだか、自分でも薄情だと思う。

「私は律がいないといやだ!絶対にいやだ!」

"子供かよ"
なんていつものようにからかう事も、目の前の彼女を見ていたらできる筈もない。

「…澪、」
「っ…やだ…いやだよ…。」

ぽたぽた。
無機質なコンクリートの上に、彼女の涙の落ちる。

今まで一緒にいたくせに、どうして今になって私は彼女を突き放すのだろう。
答えは至極簡単だ。
女同士なんて、子供もできないし、結婚もできない。
未来、澪を悲しませる事は日の目を見るよりも明らかだった。

「律よりいい人なんて絶対いない…いないんだよ…、」
「それは単なる依存だよ、澪。
私たちは一緒に居すぎたんだ。」

私が言えた事じゃないけれど。

「だからこそ、澪は私といちゃいけない。
依存なんて、この先いい事ないよ。
私よりいい奴なんて、この世に五万といるんだから。」
「…私の事、キライに、なったんだな、律。
だから…私から、離れていくんだ…。」

澪は自嘲気味に笑った。
ちがう。ちがう。
私は澪が好きだ。大好きだ。
それはきっと未来永劫かわらない。
けれど、愛しているからこそ、私はおまえから離れるんだ。
わかってくれよ、澪。

「…、…。」
「否定、しないんだ。」
「ちがうんだ、澪、私は」
「わかったよ。」

澪は小さく笑って、そして、また泣き出しそうな顔をして、

「律がそういうつもりなら、いいよ、わかったから。」

澪は言って、私に背を向けた。



「――――ばいばい、律。」



次の瞬間、彼女は、走りだした。



一瞬、私の足と頭が追い掛けろ私を諭した。
けれど、追い掛けるなんて、私にはできっこなかった。
だって、澪に"あんな顔"させて、今更「ごめん」なんて、虫が良すぎるから。
きっと、もう会う事も、ないだろう。

「…、大好きでした、なんて…ほんと私は自分勝手な奴だよ。」

綺麗な黒髪が夕焼けの中に消えていく。
頬に伝う、一筋の雫。バカだな、今更泣くなよ私。
私は一人、わんわんと子供みたいに泣きながら、彼女の走り去る姿を見ているしかない。



私に微笑んでくれてありがとう。
私に本気で泣いてくれてありがとう。
私に本気で怒ってくれてありがとう。
私に本気で悩んでくれてありがとう。
辛いとき傍にいてくれてありがとう。
悲しいとき傍にいてくれてありがとう。
弱い私を受け止めてくれてありがとう。
――――こんな私を、好きになってくれてありがとう。





「ごめんな。大好きだったよ。」




ひとりぼっち
(ほんとに依存してたのは、きっと私)
(涙が止まらないのは、自業自得だから)
(だから私は、君が好きでいてくれたこの時をずっと忘れないよ)




――――――――――――
律は澪の事が大好きだからこそ悲しんでほしくなかった。
だから律は澪のために別れを選んだ。
悲しませるのは今だけ。
澪の未来が明るく輝けるものであって欲しいと願ったから。

なんて言いますけど、やっぱり二人には幸せになって欲しいですね。
お互い相思相愛。
そんな二人で、今もこれからもあって欲しいです。


誤字脱字報告感想バッチコイデス。
 

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