K-on!

□Rain
1ページ/1ページ





Rain


ザー、ザー。
雨はどんどん、強くなる…――






好きです、付き合ってください


何回も何回もその言葉を歌詞ノートに書き連ねた。
気付けば一頁ほどすでに埋まっていて、ああ、相当病んでるな、なんて、他人事みたいに思う。
頭に浮かぶはただ一人。
色素の薄い髪色。跳ねっ毛。
ふわふわした髪。長い睫毛。
小さな肢体。いつのまにか追い越した身長。
犬みたいな仕種。男勝りな口調。
そして、私をいつも照らしてくれる、笑顔。

秋山 澪は、田井中 律が好きだ。

それはもういつのことからかはわからない。
出会った頃のような気もするし、かといって中学生だった気もした。
それでもこの感情が恋だとわかったのはつい最近で。
律も律で限りなく鈍いけど、私も私で鈍い事を再認識した出来事だった。
その日から、私の生活は律中心になった(今までもそうだったけど、もっと)。
律がそこにいれば隣にいるし、律がドラムを叩けば私がベースを弾く。
律が体育をしていれば目で追うし、最近はめっきり律の部屋で過ごす事が多くなった。

それでも。
それだけしても、だ。

律は今までと同じように私に接してくる、いつも。
その行為で私がどれだけ心を痛めているかも知らないで。
その行為の裏で私がどれだけ律に下心を抱いているかも、知らず。

「ばかみたいだ、私。」

歌詞ノートをバサ、と鞄の中に投げ入れ、ベットへとダイブする。
枕を顔に押し付けて、その息苦しさに唸った。



私はいつまでうじうじすればいいんだろう。

律への思いが、涙になり、枕を濡らした。

唸る度にしゃくり上げて、しかしその鳴咽も窓の外から聞こえる雨の雑音に消えた。

「だれか、私を助けて。」

そんな嘆きもやはり、雨音の中に消えていった…。






雨音騒ぐそんな日に、
(切ない思いが溢れ出す)






―――――――――――
雨、嫌いなわけじゃないんですケド、寂しくなりますよね。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ