K-on!

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すでに、二人の目は真っ赤だった。
涙は今だに流れ続けていて、二人の顔には、涙の跡が、刻み込まれていた。

「っりっちゃんがっ!!りっちゃんがぁ!!」

「お、落ち着いて唯ちゃん!!」

「わ、私がいけないんだ!
ずっと一緒にいたのに…
気付かなかった…
気付けなかった私が…」

唯と澪はすでに自嘲気味になっており、律が倒れたのは自分のせいだと、紬に縋っていた。
紬は彼女たちを叱れるのは、今は自分だけだと思った。
そして

パァンッ

パァンッ

「…ぃっ…!?」

「む、むぎっ…?」

澪と唯の頬を、叩いた。
驚きで二人の涙は止まり、ただただ目の前の、自分たちを叩いた紬を見つめていた。

「…二人には失望しました。
それくらいで、くじける方たちだったんですね」

ため息をつく要領で、紬は二人に吐き捨てた。
その言葉を、澪が聞き逃す筈がなく、澪は紬につかみ掛かった。
その反動で、紬は後方に倒れ、澪が押し倒す形になった。
ぐ、と紬の服を力を込めて、握る。

「それくらいって…!!
むぎは…
お前は!!
律が、律が死にそうになってる、っていうのに…!!
悲しくないのかよォオォオ!!!!!」

そこには既に、前までの澪の面影はなかった。
ただ、幼なじみ…いや、想い人と自分を侮辱された怒りを、目の前の友にたたき付けているだけだった。

ガシッ、と、紬が澪の服を掴み返した。
思わぬ反撃に、澪の表情と手の力が緩む。
それをチャンスと言わんばかりに、紬は澪を押し返し、そのまま澪の服握っていた手を思い切り捻り、投げ飛ばした。
唯は投げ飛ばされた澪を心配し、駆け寄る。
澪が大丈夫と唯につぶやくと、自分を投げ飛ばした相手を睨んだ。
しかし、その睨みも、すぐに見開かれた。
紬が、泣いていたからだ。
自分たちと、同じくらいに。

「っ…し、心配じゃなっぃ…わけ…っないじゃないですか…!!
悲しいわけっ…ないじゃないですかぁ!!」

「む、むぎ…!っ…」

紬が澪に抱き着く。
そして、澪は察した。
やはり、悪いのは自分だと。
だって、こんなにも大切な友を泣かせてしまったから。
だって、こんなにも大切な友を傷つけてしまったから。
罪悪感と後悔の波が澪に押し寄せてくる。
澪もまたソレに涙し、紬を抱き返して、共に波を流したのだった。







 
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