2

□亀裂
1ページ/1ページ




「私知ってるよ。」

唯はそう言って笑った。

「りっちゃん、あずにゃん、ムギちゃん、和ちゃん、憂…。みんなが私の事を好きなのも。」

段々と近づいてくる唯の手が、なまめかしく私の頬を撫でる。

「澪ちゃんが私の事好きなのも。全部。」

知ってる。
そう言って私の唇に噛み付いて。唯は私の体を壁へとたたき付けた。
一気に肺の中の酸素が抜け、衝撃に視界が揺れた。けれど、唯の容赦ない口付けの嵐に、呼吸がままならない。
視界が点滅する。意識がなくなりそうだ。
そう思ったら、唯の口が離れた。そして、私の髪を物凄い力で引っ張る。
前に倒れ込んだ私を見て、唯はまた愉快そうに笑った。

「はぁっ…っい…あ。」
「ねえ澪ちゃん。」
「ひっ…ぃ…。」
「私ね…。みんなと一緒にいたかったの。」

冷たいコンクリートに私の頭をたたきつけながら、唯が話す。
ごん、と鈍い音が響く。おでこが切れて、血が流れるのがわかった。
痛いけれど、痛く、ない。

「ずぅっとずーっと。楽しくお茶会して。」

がんっ

「演奏して。」

ごんっ

「遊んで。」

ごっ

「じゃれあっていたかっただけなの。」

びしゃっ

「ぁ…ぎっ…ぐ、」

何回も何回も何回も何回も頭に衝撃が走る。ときに強く、ときに弱く、ときに激しくたたき付けられ、私は呼吸をするのがやっとだった。
唯はもう、笑わなかった。

「……だから、」
「は、ひっ…ぅ…う。」
「こんな結末、望んでなかった。」

やっと衝撃の嵐が止んで、唯が立ち上がるのがわかる。

「でも、しかたないよねぇ。」
「なに、…が、」
「みんなが、私の事好きだなんて言うから。」

しかたないの。
私は頭を庇いながら、よろよろと立ち上がる。
ふらふらする。眩暈がする。頭がぐらぐらと揺れているようだ。
ポタポタと落ちていく赤い血が、床を濡らしていく。
けれど、手を伸ばして、一生懸命伸ばして、唯を、抱き寄せる。
震える手と足が情けないけれど、でも…、

「ねえ澪ちゃん。」
「…っ、な、に。」
「私の事、好き?」

私の腰に手を回しながら、唯はせつなそうに言葉を漏らした。
私はふ、と笑って、当たり前だろと言った。偽りない、私の本当の気持ち。

「…ありがとう。私も澪ちゃんの事、好きだよ。」
「ゆい…。」
「だから、ねぇ、澪ちゃん。」

唯は笑って、

「私のために、死んで?」

私の左胸にナイフを突き立てた。

「ゆ、」

私はその場に足をついた。咽の奥からなにかが込み上げてきて、私はむせた。
おぇ、と吐いたのは紛れも無い血で。紛れも無い私の血で。
私はそのまま血溜まりに倒れ込んだ。
生温いそれが、本当に気持ち悪かったけれど、体はもう動かなかった。

「…っ。」
「しかたない、よねぇ。」

唯はそう言って笑う。

「みんな、私の事好きって言うんだから。」

しかたないの。
私もみんなの事好きだから。

最後に見えたのは、私が愛して止まなかった唯の笑顔だった。




(ただ私は愛して欲しかったの
(みんなの事が大好きだから)
(だから、**したの)
(みんなの事、好きだから)



――――――――――――
唯はみんなに愛されてるとわかってたけれど、それじゃ足りなくてみんなを独り占めしたくて殺してしまったお話。

ディゴッドさん、なんだかものすごく血みどろな話になってしまいましたがどうでしょうか?(´・ω・`)
しかも澪しか出なかったし…、よくわからない話だし、本当にごめんなさい(´;ω;`)
こんな駄文でよければ貰ってくださいませ(^o^)/
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ