その他

□だって好きだから
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「律子ー!」
「さんをつけろさんを。」

レッスン終わりなのか、かすかに汗の匂いを纏わせながら私に抱きついてきた美希を軽くあしらって、目の前のパソコンに向き直る。

アイドルからプロデューサーに転身して以来、忙しくなることがとても増えた。
今だって、私がプロデュースしている竜宮小町のスケジュール管理に追われている。
忙しくなるのは良いことだ。それだけ仕事がもらえているということだから。
でも、少しくらいはやすまないと、アイドルたちの健康にも支障が…あーこんがらがってきた。
メガネを外して、目に手をやる。
目が疲れているせいか、ズキズキと頭が痛む。

「律子…どうしたの?疲れてるの?」

美希が心配そうな顔をして私の顔を覗き込む。

「…ちょっとね。ていうかさっき言ったばっかでしょ。さんをつけなさい。」
「そうなんだ…少しくらいは休まないと、律子、さんの体がボロボロになっちゃうの。」
「こんくらいで音をあげてちゃあ底がしれてるわよ。あんたははやく次の仕事いきなさい。」

しっしっ、と右手で出て行くように促す。
美希はむーっとした顔のまま、事務所の入り口の方へと姿を消した。
さてと…邪魔者もいなくなったことだし…。
メガネを掛け直し、再度頭の中でスケジュールを練る。
んー…明後日は朝から取材があって、午後からはライブがあるから…さっき入ってきた仕事はキャンセルねー…んで、明々後日は…。いや、でも…。
椅子の背もたれに体を預け、ボールペンを顎につける。
目の前にはこの一週間の仕事のメモ。
ざっと目を通して、ため息をつく。
本当に休みがないわね…今週はどうしようかしら、本当に。一日だけでもオフの日を入れないと、例えあの子たちでもいずれ壊れちゃうわ。まあ、私の前では一回も弱音をはいたことないんだけどね…。それがなんとなく寂しい気もするけど、私に心配をかけたくない気持ちはわかっているつもりだ。
……うん、やっぱり今週は一日休みをいれよう。人間、息抜きは大事だ。
じゃあこの日ね。この日はレッスンと雑誌の取材しかないから、休みにするには最適だわ。
うん、とメモを書き換える。
あとでキャンセルの電話いれないと、それに伊織や亜美やあずささんに連絡を……、っ…あー頭痛……私も休みが必要なのかしら。
…ううん、休んでなんていられない。プロデューサーの私がしっかりしてないと………、

「りーつーこーさーん!」

ピト

「ひわぁ!!?」
「あははは!変な声ー!」

考え事をしていたせいで、後ろから近付く悪魔に気付かなかった私は、急に頬に冷たいものを押し当てられ叫んでしまった。
私の叫びを聞いてその悪魔ーー美希は、腹を抱えて笑っていた。

「みーきー…あんたねぇ…!」
「わ、わわわわちがうの!怒らないでほしいの!ミキ、律子、さんにこれ渡したくて…!」
「怒るわよそりゃ!こっちは真剣に仕事してんのよ!?…って…これ…。」

美希に手渡されたものに、思わず狼狽する。
それはいつも私が飲んでいた栄養ドリンクで、たしか今は冷蔵庫には一つもなかったはずだ。

「もしかして…。」
「うん!ちょっとそこのコンビニまでいってきたの。あ、おにぎりにのついでだよ!ついで!」

たしかに、美希の右手にはおにぎりが入っていると思われるコンビニの袋があった。

「…ね、美希。」
「なに?」
「あんた、知らないうちにすごく良い子になってたのね。私を気遣うなんて相当だわ。なにかあったの?」

私がそう聞くと、美希はぱちくりと双眸をしばたかせ、そのあとすぐににっこり笑った。

「だって律子、さんが辛そうだったから。ミキ、律子、さんには元気でいて欲しいもん!あ、あとミキはもともと良い子だよ!」

〜っ…あーもう!

「…ミキ、今週の土曜日は暇かしら?」
「え?……あーうん。その日はたしかオフだよ?」
「じゃあ一緒に買い物に行きましょうか。久しぶりに遊びましょう。」
「え!?ほんと!?ほんとにほんと?」
「私が誘ってんだから本当も嘘もないでしょ。」
「っやったやったやったー!律子とデート!」
「デートじゃないし、さんをつけなさいさんを。」

やっぱり、私には休みが必要だったようだ。美希に心配された挙句、まさか差し入れをもらって、そして励まされるなんて。
美希、私を元気付けたいなら、土曜日、ちゃんと覚えてなさいね?寝坊して遅刻なんてしたら、許さないんだから。
それと、私が竜宮小町にかかりきりになって疎かにしてた事務所のみんなのことも、色々聞かないとね。
……もちろん、美希、あんたもだから、覚悟してなさい。






(あ!律子、さんのおにぎりもあるの!お腹すいてるでしょ!はい!)
(……本当に気が利くわね)







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アイマスよりみきりつ!
この二人は本当にかわいい…。

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