(^::^)<うほっ
□とらぬイタチのチョコ算用
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バレンタインのチョコ。たとえ愛がこもっていなくとも、受け取った方は結構喜ぶものである。
アジトのキッチンから甘い匂いが漂ってくる。
「うわ…空気が甘…」
この甘さ、きっとチョコレートだ。
その甘い香りに誘われるようにマダラはキッチンに足を向けた。鬼鮫が何かお菓子を作っているのだろうと思っていたのだ。
「…で?…あぁ型に入れるのか…」
………ん?
今の声、明らかに鬼鮫ではなかった。
「…これは…」
マダラはそっとキッチンを覗き見してみた。端から見るとちょっと怪しい光景。
そしてマダラは見てしまった…!
イタチが不慣れな手つきで溶かしたチョコを型に流し込んでいるところを……!
間違いない、奴は手作りチョコを作っているのだ。
(な……イタチが手作りだと……!?)
いつもは食べる専門のイタチが、何を思ったかリラックマのエプロンと三角巾つけて真剣にチョコを作っている。普通ならここで彼が何のためにチョコを作っているか悟ってしまうところだが、少々現代の文化についていけてないマダラには何だかさっぱり分からなかった。
「あとはトッピングか。案外簡単だな」
マダラが見ているとも知らず、独り言を言ってイタチはトッピング用のナッツをチョコに乗せていた。途中何回かつまみ食いしていた。
(随分手が込んでいるようだな……つうかエプロン姿可愛いなオイぃぃぃぃ!)
めったに見られない貴重すぎるイタチのエプロン(しかもリラックマ)姿にちょっと興奮するマダラだった。背後に誰かいるとも知らないで。
「マダラさん…」
「ぬぉいっ!!」
いきなり呆れた声をかけられた。すっとんきょうな声をあげてしまうマダラ。結構大きな声が出ていたはずだが、キッチンにいるイタチは気づかず作業を続けている。
「(ぬぉいっ?)マダラさん、アナタ何を覗いてるんですか…」
声の主は鬼鮫だった。
「いや、あのイタチが…つうかいつからいたお前」
「アナタが“随分手が込んでいるようだな……つうかエプロン姿可愛いなオイぃぃぃぃ!”とか言ってハァハァしてた時から」
「え、オレ声出てました?」
どうやら心の中だけで言っていたつもりのセリフは知らず知らずのうちに口から飛び出していたらしい。
「ばっちり出てましたよ…まったく、キッチン覗き見てハァハァするなんてアナタ変態ですねぇ」
「へ、変態じゃないぞ!仮に変態だとしても変態という名の紳士だ!」
「まぁ私もリラックマのエプロン姿のイタチさんすごく可愛いと思いますが」
「お前もオレとそんなに変わんないよ。…ん?鬼鮫、お前イタチが今、チョコ作ってること知ってるのか?」
マダラの問いに頷く鬼鮫。
「えぇ、急にキッチンを貸してくれと言われまして。明日はバレンタインですからね、チョコを作るんだろうなと」
「ばれん…たいん…?」
もう大分年がいっちゃってるマダラは、カタカナの単語に非常に弱かった。
記憶を引っ張り出してみると、そういえば前にゼツが「バレンタインは好きな人にチョコを渡して愛を語る聖なる日」「ダガ本当ハバレンタイン司教トイウ人ガ処刑サレタ日ダトサ」と雑学を披露していた。
「そうか…そうか…」
バレンタインという言葉でマダラは全てを理解した。そしてとんでもない思い込みをした。
「なるほど…イタチはオレに手作りチョコを渡したいんだな!」
「は?」
鬼鮫が怪訝な表情でマダラを見る。そして、
「何を言っているんですか、イタチさんは私にチョコを渡したいんですよ?」
こっちも大分思い込みが激しかった。