Short×krk1

□かがみよかがみ
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「それは…確かに怪しいのだよ」


帰ってきて夕食を終えた7人の小人に事情を話してリンゴを見せると、緑の小人が白雪姫の懸念に同意しました。


「今は多種多様な犯罪が溢れる時代、用心するに越したことはないだろう。それこそが人事を尽くすという事なのだよ」

その意見に赤い小人も頷きます。

「そうだな。どこの誰とも分からない者が押し付けた品質の分からないリンゴなど、僕の白雪が食べる必要はない」



食べたいなら最高級を買ってやるからそれは捨てろとまで言う赤い小人。



「でもよ…高級かは分かんねぇけど、このリンゴも十分美味そうじゃねぇ?」

「そうっスね…食べ物を粗末にするとバチが当たる気が…」

「食べられるおやつを捨てるのは、嫌かも…」



青い小人の呟きに、黄色と紫の小人も続きました。
ふぅんと向けられた赤い視線に3人の背筋が凍りますが、そんなものは気にも留めずに今度は水色の小人が口を開きました。



「今は農家の方も個性を出さなければ、と色々工夫をしていると聞きます。本当にいいものを食べて欲しくて、まずは味を知って貰おうと家々を回ったりもするとか…」

その言葉にうんうん、と頷いて灰色の小人が言います。

「白雪姫が会ったのはもしかしたらそんな頑張る農家さんだったのかもなー…あんまり疑って掛かるのも良くないぞ。リンゴ作ってる奴が悪人な訳ないって、な」



そう笑って大きな手からひょいと投げられたリンゴを受け取った白雪姫は恥じました。

リンゴ売りの見た目の怖さだけで疑ったこと。

そして誰が作ったのであれ、大切に育てられただろうリンゴを粗末にするところだったこと。



「すみません皆さん…私が間違ってました。このリンゴは大切に頂こうと思います、出来れば皆で…」



心配してくれた赤や緑の小人にも配慮して、白雪姫はリンゴをアップルパイにして皆でお茶会を開こうと提案しました。
火を通せば品質的には多少なりとも安心出来るだろうし、リンゴ売りも招待してしまえば仲良くなれるだろうとの考えです。

その意見に納得した小人達はにっこり笑って頷きました。
白雪姫も嬉しくなって、早速名刺を見てリンゴ売りに電話をします。



「あ、もしもしリンゴ売りさんですか?」

「!…お前、今日の貧乏人か。何の用だ、何で電話なんかしてる」

「実は明日うちで…」



にこにこ話す白雪姫の後ろで、小人達は家具を拭いたり、花瓶を出してきたり、早速お茶会の準備に取り掛かります。
電話を終えた白雪姫もアップルパイの仕込みを始め…そんな夜はあっという間に更け、疲れて眠る彼らの元へ朝はすぐやって来るのでした。





※ちなみに灰色は灰崎さんじゃなくて目がグレーな気がする木吉さんのつもりです
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