Short×krk1
□かがみよかがみ
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コンコンコン、
玄関をノックする音に、白雪姫は家事をしていた手を止めました。
「はーい、どちら様ですか?」
「流しのリンゴ売りだ、開けろ」
「あ、間に合ってますー」
「ふはっ、今お前ん家にリンゴが無い事ぐらい知ってんだよ、開けろ」
完全に開けてはいけない怪しさと粗暴さのリンゴ売りですが、何となく開けない方が怖いような気がした白雪姫は薄く扉を開いてしまいます。
ガッ!
「最初からさっさと開けろよバァカ…!」
「すすすすみませんすみませんごめんなさいぃ…!」
指を差し入れられたかと思うとギギギと扉は簡単に抉じ開けられ、その向こうに居る妙にマロ眉のリンゴ売りのブチギレた瞳と目が合います。
黒いローブを被ったリンゴ売りはこの時点でかなり怖いのですが、更なる恐怖が白雪姫を襲います。
「これは特別有機栽培の貴重なリンゴで、本来お前みたいなグズの口に入る代物じゃないんだが特別に売ってやる。買え」
「(えぇぇ)いやそんな高価そうなもの…結構で」
「買え」
「ゔ…っ」
ぐりぐりとリンゴを頬に押し付けられる白雪姫は完全に悪徳業者に捕まった、と泣きたい気持ちです。
ただでさえ小人の家に厄介になっている身、無駄遣い出来るお金なんてありません。
「あの、買わせて頂きたいのは山々なんですが先立つものが…その」
「…ちっ、貧乏人め」
「(舌打ち…)」
「哀れだからいくつか恵んでやるよ。食って美味かったら死ぬ気で働いて買え」
そう言い捨て、幾つかのリンゴと名刺を置いてリンゴ売りは帰っていきました。
その残された赤い果実をそっと見詰める白雪姫の頭に、最近聞いた話が過ります。
悪徳訪問販売…!
無料でお試しに、と商品を置いていき、後で高額な代金を請求するという、あの、あれでは…!
ごくり、と見詰めるリンゴは艶々と赤く熟れ、とても美味しそうです。
食べたいけれど、怖くて食べる勇気の出なかった白雪姫は取り敢えず小人達の帰りを待って相談してみることにしたのでした。
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