Short×krk1

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別の日のこと。


朝練で疲れた紫原が机でうとうとしていると、ガシャーン!と大きな音がした。
うるさいな…と眠たげな瞳を向けると、ふざけていたらしい男子数人が花瓶を割って慌てている。


「もー男子!朝から暴れるからだよ!」

「ごっごめんって!」

「取り敢えず拭こうぜ!」


片付けられる花瓶と花を見て
(…きれい、だったのにな)
とちょっとだけ惜しく思いながら紫原は再び目を閉じた。








「こら、いつまで寝るんだ紫原」

「いて」


教師にポコンと頭をはたかれ顔を上げる。
どうやらとっくに授業が始まっていたらしい。

むむむーっとまだ眠い頭のまま伸びをした紫原は首を回したが、ある事に気付いてぽかんと動きを止めた。


「よし、起きたら208ページから読ん…おい?」

「…あれー?」


その視線の先には――先程片付けられた筈の定位置で、新しい花瓶が新しい花を包んで素知らぬ顔で佇んでいた。






また別の日には、前日まで風でよく窓際の生徒を邪魔していたカーテンが大人しくなった。
ちらりと見に行くと、裾にマジックテープと重りが縫い付けられ、今まで自由に風に舞っていたカーテンは行儀良く壁に沿うようになっていた。

またまた別の日には、掃除中に紫原が外してしまった筈の箒の柄が次に見るとくっついていたり、破れた時間割り表がいつの間にか貼り直されていたり。



一度気になると、色んな事が目につくようになる。



誰かが昨日、ここがこうだったらいいなと思った部分が今日はちょっとだけ変わっているような…。
ほんの些細な一つ一つを拾うそれは、まるで間違い探しのよう。

試しに学級文庫の本を教室のあちこちに出しっぱなしにしてみたら、次の日には並びまで作家順にきちんと収まっていた。


「おぉ…!」


……これはもう、気のせいじゃない。
誰かの存在を確信した紫原は、まずはクラスメイトの認識を確認してみることにした。


「ねーねー黄瀬ちん…このクラスって…居るよね?」

「えっ!な、何がスか」


“居る”って何。

まさか昼ごはんを食べながら怖い話をされるのかと身構えた黄瀬に、紫原はポッキーをかじりながら呟いた。


「んーとね……何か…妖精みたいなの?」

・・・・・・・・・

「ぶ…っうわはははは!な、何スか妖精て!妖精!?」

「小人かも?」

「こ び と!!ちょ、もうやめて欲しいっス…!」


ひーハライテー!と昼食を放り出してげらげら笑い転げる黄瀬に、むっと口を曲げた紫原は今までの不思議を説明した。


「えー…そんなん気のせいじゃないんスか?」


笑いすぎて涙目になりながらも取り合わない黄瀬に、時間の無駄を悟る。


「……もーいいし。捕まえて見せたげるから、びっくりしなよ」



信じないなら、証明するのみなのだ。







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