Short×krk1

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……間に、合わなかった。


始業にはまだかなり早い教室で、がっくりと肩を落とす。
教卓の向かって左、窓際の棚の上。
また昨日とは違う花が新しい水を飲んで生き生きとそこにあるのを見て、彼――紫原敦は失敗したことを悟ったのだった。











Catch your tail








――最初に気付いたのは、たまたまだった。


「ありがとねー黒ちん」

「いえ、気にしないで下さい」


次の授業に使う辞書を忘れた紫原に、黒子は快くそれを貸し出した。
赤司・緑間辺りだとこうはいかない。
多分持っていない青峰はそもそも頼む候補に入っていない。

持つべきものは黒子である。

じゃあねー、と簡単に辞書を手に入れられてご機嫌に黒子の教室を後にしようとした紫原だったが、バサバサッと何かが落ちる音に足を止めた。


「んー?どしたの?」

「あぁ、風で誰かの山が崩れたみたいですね」


黒子が振り返って指差す方を見ると、壁際のロッカーの上に乱雑に積み上げられたファイルの山が崩れて散らかっていた。


「あららぁ」

「ちょっと整理しないとダメですね」


黒子の言葉にもう一度ロッカーを見た紫原は、そこで初めて違和感を感じた。

………なんか…きたなくない?

ロッカーや棚の上に適当に積み上げられる私物の山。
閉め切れてない扉から溢れたプリント。
だがそんなのは当たり前の光景の筈だった。


「むー…?」


何故そう感じたのかよく分からないまま首をかしげて自分のクラスに戻った紫原は、席に着くとぽんと手を打った。

なるほど。

黒ちんの教室がきたないんじゃなくて、このクラスがきれいなんだ。

ロッカーも棚もきちんと整理され、上には私物が積まれるどころか花まで生けてある。
自分が知らない間に大掃除でもしたのかなー、と違和感の正体が分かった紫原は興味を失い、ごそごそと鞄からお菓子を取り出した。






 

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