企画
□ようこそユニオン総合病院へ
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〜歯科医のカタギリ先生編〜
治療用の椅子に座り、ライトの当てられた彼女の顔は正に蒼白で、思わず苦笑が漏れる。
「大丈夫、痛くしないよ。ちょっとだけだから我慢しようね」
「ううう嘘です絶対痛いです…!」
安心させようと微笑んでも、その緊張はピークに達していて効果がないみたいだ。
いつも気丈な彼女の哀れな様子にこの職業の因果さを思いながら、震える手にそっと自分の手を重ねた。
――大事な君に痛い思いをさせるのは、僕だって嫌なんだよ。
出来るだけ早く終わらせようね。
「じゃあいくよ?はいあーんして…」
キュイイインゴリゴリゴリ!
「…!……!!(ひいぃ)」
「怖くない怖くない、もうちょっとだよー…」
ギュインガガガガガ…
*****
「はい終わり。よく頑張ったね、えらいえらい」
「うっうっ、なっ泣いちゃうなんて…すみませ、(ぐすぐす)」
可哀想に。ぽろぽろ零れる涙を白衣の袖口で拭ってやっても、自分でもどうしようもないのか一向に収まらない。
あぁ、可愛い君にそんな風に泣かれると、僕も堪らなくなってしまうよ。
「…嫌なことして、ごめんね?」
「うぅ〜…カタギリ先生は悪くないです、むしろ助けて貰ったのに私の方がごめんなさいぃ…。
でっでも、昔からこれだけはどうしても怖いんですー!(わぁん!)」
そう言ってぎゅっと抱きついてきた彼女の頭をよしよしと撫でていると、騒がしい足音が近付いてきた。
病院内は走っちゃ駄目だって、何度言ったら解るのかな全く…
バタバタバタバタばぁん!!
「おいカタギリ!今ここに『私の』ナースが…!」
「(はぁ)うん、来てるよホラ」
「エーカー先生…」
僕の胸からそろっと顔を離した彼女を見てグラハムは大股で近付いてくる。
「むむっそんな男に抱きついては駄目だぞ!めっ!
抱きつくなら私にしろ、一晩中、いや一生側に居て慰めてやる!
…というか、もう治療は終わってしまったのだな。そんなに泣いて、痛かっただろう?可哀想に…」
そう言いながら白衣のポケットをごそごそ漁るグラハム。
え…まさか君…
「ほら、これでも食べて元気を出…」
「グラハム!駄目だよ治療したとこなのにそんな甘いものばっかり…!」
キャラメルやチョコ、ヌガーにナッツバー等、わざとかと思う程の虫歯要因を両手一杯に差し出すバカ…間違えたグラハム。
でも、つい口が悪くなってしまうのも仕方ないと思うよ。
「大体君がそんなものばっかり毎日与え続けるから真面目に予防してた彼女がこんな事になったんだろう!」
「なっ…だ、だって喜ぶんだぞ!その笑顔がそれはもう可愛いんだ、毎日だって1日に何回だって見たいぐらい可愛いんだ!仕方ない!」
「えっ1日に何回も!?それじゃあどんなに気を付けても虫歯になるよ!
グラハム。君1つ言っておくけど、彼女は『君の』ナースじゃない…僕のだ!傷つけないでくれ!」
「ななな何だと!?誰がお前のものだ!カタギリ貴様・・・かっ捌いてやる!
誰か!メス!」←内科医
「(あわわわ)あ、あの、お二人とも落ち着い『ガシャーン!』ひー!器具がー!」
《ピンポンパンポーン…あー業務連絡、業務連絡。
グラハム・エーカー先生、ビリー・カタギリ先生。苦情が来ておる、至急院長室まで来るように。
…良いな、すぐ来るんじゃぞ!(ブツン)ピンポンパンポーン》
「「「・・・。」」」
「…エイフマン院長…怒ってましたね…」
「「…。」」
何だか給料カットの予感がするよ。穏やかじゃないね…
〜お大事に〜
◇旧日記から移動してきました。
…自由にやり過ぎた感たっぷりですみません。