小説

□おもい
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今ではどこをどんなに風に触れられてもすぐに快感に酔う様になった
特に何をされても抗うことは無い
しかし、土方が何を思って何を考えて行為を進めているのか今でもよく掴めない
肉体的な欲求だけでは解明がつかない事があった
自分自身、欲望だけで男の土方に組み敷かれている訳ではなない
それぐらい気にしても良い筈だ、当然の様に自分に言って聞かせた




ー今から四年前ー



新緑萌える初夏の昼下がり、そろそろ本格的に気温が上がり出すこの季節涼しげな顔で木の枝に腰かける少年がいる
沖田総悟、十四歳

「もーそろそろだな…」

地面から遥か上空で細く長い足をプラつかせながら林檎飴を口にくわえて獲物を待ち構える
いつもこの時間になればこの場所にやってくる
初めて言葉を交わしたこの木の下に


「うふふふ…」

そう考えていると遠くの方から喜色に富んだ女の笑い声が聞こえて来た
沖田は足の動きを止めて息をひそめた

「やだあ…十四郎さんったら」

待ちわびたその人物の名を親密そうに猫撫で声が呼ぶのに眉を寄せる
黒の長髪、着流し…この位置からでも確認できる今や沖田と同門の門下生土方十四郎だった
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