小説

□神様お願い!
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総悟の姉、沖田ミツバが亡くなり早ひと月が過ぎようとしていた
葬儀が終わって人気が無いかの様な静寂さを保っていた屯所内も、以前の様な気忙しさを取り戻しつつあった

「…総悟」
「土方さん…」

サラリと金糸が揺れて振り返る
障子から透ける夕日に照らされ、紅茶色に染まるその姿は時が止まったかの様な哀愁に満ちていた

「今日は大丈夫か?」
「へい…ごめんなせ…」

調子を窺うと、反省した子犬の様にしゅんと頭を落として謝ってくる
あれから総悟は姉の死からしばらくは塞ぎ込んだものの、近藤さんや隊士達に心配掛けまいと極めて気丈に明るく振る舞っていた
しかし元々、繊細で決して芯の強い性質とはいえない総悟は、その無理が祟ってかここ数日の間、精神的に不安定な状態が続き、不眠と摂食障害を併発していた

「何か食いたいものはあるか?」
「いえ…腹すいてないんでさ…」

口調が頼り無い、あれだけ小生意気で勝ち気だった総悟の衰弱ぶりに内心俺は叫び出したい様な衝動に駆られていた
総悟には肉親という血縁者がもういないのだ
唯一の頼どころを無くした今のこいつは孤独の淵から戻れないでいるのだろうか
自分はもう独りだと考えているのだろうか
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