NOVEL

□歯を食いしばれ
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懲りない分家どもは、何度でも俺を殺しに来た。
今度は凄腕のヒットマンを雇ってきたらしく、部屋に銃声が鳴り響く。
何発かが俺の身体を貫いた。近くにいたスクアーロが、悲鳴に近い声で俺を呼んでいるのが遠くに聞こえた。死ぬな、死ぬなと。


危ないところを貫かれたらしい。もちろん苦しかった。医師は弾丸が残ってないのが不幸中の幸いだと言った。そんなことどうでもいい。
俺が苦しがってる傍でも、スクアーロは死ぬなとうわごとのように言い続けていた。あまりに言うので「死んでもかまわない」と言ったら、泣かれてしまった。伸び始めた髪の間から、雫がポロポロとこぼれる。
そんなこと言うなよぉ、と言いながら俺の手を縋るように掴んだ俺より一回り大きな薄い手は、カタカタと震えていた。
こいつだって、まだ子供なのだった。
俺は、生きなければならないと。生きたいと、初めて思った。






響く銃声。窓ガラスの割れる音。
これがデジャヴというやつだろう。


あの時と違うのは、銃弾の数と俺の身長と、横切る影、と。




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