NOVEL

□嘘
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喧嘩もしたけど気付けば一緒にいたし、ザンザスはうざがったけどオレはそれが本気じゃないことがわかってた。兄弟のようで、決定的な何かが違う。よくわからないけど、そんな感じだったと思う。




ある時だった。そう運命の日。

いつものようにザンザスのところに遊びに行くと、ザンザスはベッドの上で蹲っていた。いつもと違う。

「ザンザス…?」

声をかけても返事はない。
怒られる可能性もあるが、ベッドまで近づいてみた。いつもなら勝手に入るなと何か投げられるのに(入るけどな)今日は無反応。
なぁ、と肩に手を置くと、微かに体が震えてるのが伝わってきた。

「どうかしたのかぁ?な、御曹司ぃ」

ぴくり。
やっと頭を抱えていた腕が反応するがやっぱり顔は上げられなかった。

「…御曹司、て」

「ん?」

「御曹司って呼ぶなドカス」

あまりに弱々しいドカスで、オレは反論ができなかった。もう一回ザンザス、と呼んだ。

「オレが、お前にしてやれることなんてないかもしれないけど、あるなら、なんでもするぞぉ」

その時オレは気付いた。
ザンザスとは腐れ縁の幼なじみで、最初っからムカつくやつだったけど、オレはザンザスのためならなんでもできるんだ。


「お前のためなら、なんでもする」


不思議な感覚。初めて気付いたのに、初めから知ってたかのようにすとんとその事実はオレの中に落ちて納得した。

自分の頭を抱えていたザンザスの手が、肩に置かれていたオレの手に触れた。ぎゅうと痛いほどに腕を掴まれ、顔をしかめそうになったが、やめておいた。
やがてザンザスの口から発せられた言葉は、衝撃的だった。

「ジジイを殺る。本部を、落とす」

一瞬茫然としかけたが、さらに強く掴まれた痛みが、オレを現実へと引き戻す。

初めて会った時の柔和なあの視線。
それらを脳内でぐちゃぐちゃにして。


「殺ろう。じいさんなんて引きずりおろして、オレがお前をボスにしてやる」


その後、オレたちは黙って手を繋いでいた。
途中で寝てしまったから、いつまで繋いでいたかは、わからない。


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