NOVEL
□嘘
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※幼なじみ設定な二人のお話を詰め込んでみました。
第一印象は、さいあく
パパが支援しているファミリーのボスだからな、時々助けてもらってるしお行儀よくするんだぞと言われて連れていかれた城は、ほんとにでかかった。さすがにオレも城に住んだことはない。子供ながらにも自分の父親はかなりの金持ちでそれなりに大きな会社の社長だということはわかっていたのが、その時は驚いたもんだ。こんなとこに住んでる奴がいるのか、と。
城の前で止まった車からおりたら城からわざわざボスとやらが出迎えに来てくれたらしい。父がニコニコとしながら初老の男と握手をしていた。
この穏和そうなじいさんがこの城に住んでるのかと、思わずじっと見つめた。確かに金持ちそうなオーラはあるが、あの老舗マフィア(これもまた、子供ながらに悟っていた)のボスとは到底思えなかった。
ふと、握手をしている光景を眺めている視界にちらつく黒い影があった。
男が言った。
「あ、息子のザンザスです」
オレの父親も慌ててオレを紹介した。
男の後ろにいた、紹介されて前に出された“息子”はどうもと挨拶したが、どうにもめんどくさそうな雰囲気を醸し出していた。オレより年上だろう、オレを上から見下ろした(子供の頃の歳の差ってでかいよな)その目は、血のように真っ赤だった。
その目をまたポカンと眺めていると、目と眉の間が狭くなってにゅっと手が伸びてきた。
「ゔぉぉおい!いてえぞぉ!!」
少し伸び気味だった髪をぐいぐい引っ張られたオレは少し涙目になった。クソ!なんなんださっきっから!
「うっせえ、ジロジロ見てんなドカス」
ド カ ス !!??
オレだっておまえほどじゃねえが金はあるし、自慢じゃねえがフェンシングの大会では優勝だって何回もしてるんだぜ!?
そのオレが!!?
第一印象、さいあく!
そうやって初対面の場で啀み合っている子供たちを、父親たちは微笑ましそうに見ていた。
今思えばオレの銀髪が珍しくて、触ってみたかっただけだったのかもしれない。けどその時のオレはあれがよほど屈辱的だったらしく、その後髪を短く切った。後日髪が短くなったオレを見た時のザンザスの少し残念そうな顔は、たぶん一生忘れない。
その時から、オレたちの腐れ縁のような関係は始まったのだった。
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