NOVEL

□猪突猛進!
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ぼんやりと複雑な気分を味わっていると、いつのまにいたのかボスが運転席に乗り込んできた。
オレが運転してもいいのだが、片手のオレに任せたくない、とザンザスはオレが運転するのを嫌がるのだ。失礼なやつ!


「九代目は?」

「先週より顔色がよかった」

「そおかぁ…」


よかったな、とは言えなかった。
あんたがちょっと嬉しそうにするもんだから。
無表情のつもりらしいけど無駄だぜえ?オレにゃぁバレバレだあ。


「おい」

「ん?」

見るからにふてくされてたオレを見兼ねてか、ザンザスはハンドルを握らずに車の前方を見据えた。なんだか分かりやすく緊張したような様子だ。いやまさか、ザンザスがなぁ。

「おまえは…、よくついてきてくれたと思う。おまえが来なければ他の奴らもついてこなかっただろうな」

「はあ?」

ボス、いやザンザスは慎重に一言一言を選んでいるようだった。時々そのワインレッドの瞳が迷うように揺らいだ。

「俺が生きてるかもわからないのに、8年間もおまえは俺を待った。ゆりかごで滅亡寸前だったヴァリアーを立て直したのもおまえだと、ルッスーリアから聞いた」

「な、なんだよ急に」


今までその8年のことを馬鹿だと笑われたことはあったが、このように言われたことはなかった。別にそのことに不満を感じたことはない。ザンザスの言うとおり、オレが勝手にやってたんだから。オレが、あんたのためにやってたんだから。
なのに。

なのに、何で今更…



「よくやった。頑張ったな、スクアーロ」



そういって優しく頭を撫でる手に、溢れる涙が止まらなかった。
見返りなんてこれっぽっちも欲しくなかったのに、この温かな手が嬉しくて堪らなかった。


「…ゔ、ぇ…ボスぅ…」

年甲斐もなく声を上げて泣き出したオレの目尻を指で拭うと、ザンザスは言葉を続けた。



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