NOVEL
□愛し君へ
2ページ/3ページ
「おい、暇なら帰れ」
そんな姿に見かねた俺は声をかけてみた。しかし奴はブンブンと頭を横に振る。
さっきからこの調子だ。何度言っても帰ろうとはしない。誘ってるのかとも思ってみたがそういうわけでもないらしい。
よくわからないが、なんだか今日は気分が良いので追い出すことはやめて再びデスクに向かった。
今日やるべきすべての仕事を片付けて左手の時計を見る。
午後11時27分。
そのまま部屋にあるソファーに目をやると、スクアーロはうつらうつら舟を漕いでいた。俺の本も床に落ちている。ドカスが。
「おい、部屋に戻れ」
今度こそは帰らせよう。
スクアーロの肩を軽く揺さ振ると、奴はびくっと飛び起きて慌てて座り直した。まだいるつもりか。
「…俺のベッドを貸してやってもいい。寝やがれ」
「オレは起きてるんだぁ」
なんなんだ。いつもなら睡魔に素直じゃねえか。
そんなことを言っている間に、ほら、もう頭が不安定になってきている。
かくりと頭が揺れるたびにハッと目を擦る奴に、カスなりに理由があるのだろう、なんだかため息が出てしょうがないので自分も奴の隣に座った。
.