NOVEL

□しあわせは、
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「ザンザスとスクアーロはいっつも一緒にいるね」
「あ?」
「仲良しだねって意味」


だって、護衛に次官を連れる上司がどこにいる?

そう言ったら彼は、こいつが一番腕が立って身代わりにもなるって言うんだろうけど、
でも、スクアーロの細身は身代わりには向いてない。

俺がにこにこしてるのを見て、スクアーロは眉を少し下げた。

「あぁ、ザンザスはオレがかわいそうだから傍に置いてくれてんだぁ。
オレ、ザンザスがいないと生きてけないから」

予想とは違う答えが返ってきて内心焦った。
その様子は、彼の名の“傲慢”とはかけ離れた表情だった。
もしかして、彼はまだ気付いていないのか?

「でも、オレ、それでもザンザスの傍にいてぇんだぁ。馬鹿だろ?」
「え、スクア…」
「ゔぉぉおい!もうこんな時間じゃねぇかぁ!早くしねぇとボスに怒られるぜぇ!
ツナヨシ、またなぁッ!」
「え、えっ?」

言いたいことがあったのだけど、すでにその銀色は廊下の端に見える。

まぁ、俺が口出しするようなことでもないのだけど。



しばらくスクアーロの消えた廊下をぼんやり眺めていると、急に後ろから気配を感じた。

「あ、ザンザス」
「チッ、てめぇ来てたのか…」
「9代目は元気?」
「今は安定してるんだと」
「じゃぁ後で顔ださなきゃ」

数年前は最悪だったこの義理の親子の仲も、今はぎくしゃくしながらも顔を合わせるようになったようだ。

世界は刻一刻と変わっていくんだなと感じる。


「あ、ザンザス宛てに小包届いてたよ」
「受け付けか?」
「うん」

ヴァリアーのアジトは関係者以外知らないので、郵便物は本部を通して運ばれる。
その小包もその行程の途中だったらしい。

「…あれ、指輪?」

にやりと笑う俺に、ザンザスはハッとため息をついた。

「まぁな」

そういいながらザンザスが目を逸らす。
その口元が僅かに笑っているのを見て、俺は確信した。




「………スクアーロは、バカだねぇ」


早く気づけばいいのに。



「しょうがねぇよ。ドカスだからな」



君はもう、しあわせになれるキップを持っている。




END

(しあわせは、もうそこにある)




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