NOVEL

□ゆめ
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廊下は 薄暗かった。


かつて最強と呼ばれたヴァリアー隊のアジトは、もっと明るく塵ひとつ飛んではいなかった。

その男が歩く絨毯からは、足が踏み出されるたびに埃が立ち、その靴を汚した。
男にはそれが不快であった。

どうしたのだ。
なんだこの有様は?
なぜ照明に蜘蛛の糸が張ってある?


問いたくても、問う相手がいない。



しばらく埃っぽい廊下を突き進んで行くと、やっと明かりの漏れている扉を発見した。
記憶では、あそこは談話室であったはずだ。

いつでも綺麗に磨かせていたドアノブもくすんでいて、イライラしたのでドアを蹴り開けた。
中には人影が二つあり、二人で話していたのだろう、向かい合った姿勢のまま二人とも顔だけこちらに向けぎょっとした顔をしていた。
そんなに俺が珍しいか。

「あ、なたは…!」
「え…ボス…?」

二人とも長身の男であった。
一人は女のような口調でしゃべり、もう一人は顔中にピアスをあけている大男だ。
二人ともこの屋敷ほどの変化はない。

俺はどのくらい眠らされていたのだろうか?
「やだっうそ、ホントに!?」
「ボス!お怪我は!?」
「俺は……」

「俺はどのくらい眠っていた?」


さっきから騒いでいた二人が急に静かになり顔を見合わせた。

かすかに眉尻が下がったので、良くない返事が返ってくることは明らかだった。


「……8年よ」



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