NOVEL

□なくしたとおもってたのに
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※新春



夜がふけた。
身も凍るような冷たい風を頬を刺すが、それでもスクアーロは窓から外を眺めるのをやめなかった。
遠い町並みが、いつもより明るくて騒がしく見えるのは気のせいではない。

大晦日。
何度、来年はザンザスを救えるだろうか、とこの空を見ながら思っただろうか。
来年こそは、来年こそは、と。

かえって明るい町並みが恨めしく、そんな風景を眺めながら今年もできなかったという後悔と、来年はという不安で満ち溢れていく自分の年越しは酷く惨めに思えていた。

年越しなど、何がめでたいものか。
365回積み上げてきた毎日を、またスタートに戻される瞬間だ。
元旦など、一年分の後悔とそれでも変わらぬ日常に絶望する日である。




ブロロロとエンジン音が聞こえてきた。
そして、遠くからの歓声で、この地も新年を迎えたことを知る。
しばらくそのエンジン音を聞いていると、窓の下に黒塗りの車が現れた。運転手が後部座席の扉を開けると、降り立つ見るからに高級なスーツをこれでもかと飾り立て着こなす男。

「よぉ、楽しかったかぁ?新年パーティーは」

上から声をかけると、男はめんどくさそう顔を上げた。

「面倒だから帰ってきた」

「だろうなぁ。見りゃわかる」

だったら言うなとばかりに顔をしかめると、思い付いたように腕を上げている。腕時計を見ているのだろう。

「年明けたか」

「ああ。ついさっきな」


年明けの瞬間が、一番辛かった。
その時に何をしていたって、寝ていたって、食事をしていたって、任務をしていたって、一番重くて暗い時間だった。

そうだった。



去年までは。



「…明けまして、おめでとう」



おめでとうなどと自分が言うようになるとは。
めでたいと、思うようになるとは。

しかし本当に、心から思っているのだから仕方ないだろう。


「今年もよろしくなぁ」

「ああ」


おめでとうと思えるその喜びを。今年もと言えるこの喜びを。



なくしたとおもってたのに


貴方とスタートに立てる喜び、を。




***

紛れもなく元旦に書き始めた今年初めての文です笑

今年もよろしくお願いします!


100101
はとり


タイトル/揺らぎ様

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