NOVEL
□うつくしいよる
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※-8XS
『イタリア』
『日本』
なんと遠いことだろう。俺だって数回しか行ったことがない。
東アジアの最果て。極東。
ジャポーネ。
任務だってドイツやフランス、そういったヨーロッパの方が余程多い。
それなのになぜ俺がこんなにも日本語を練習しているかと言えば、単に初代が晩年を日本で過ごしたと言われているからだ。
日本語は独特すぎる。
意思表示だけならともかく、漢字、ひらがなカタカナ、敬語、方言、古語、略語、そこまで極めるとなると相当の時間がかかる。一生見ないで死んでいく字があるかもしれない言語などそうそうないだろう。
けれど。
その多様性には参るが、美しいと思う。
空気が微かに震えた。
夜の静けさを破るように足音が響いたかと思うと、扉を壊さんばかりの勢いで白が飛び込んできた。
「御曹司?いるかぁ?今度の剣士なんだがよぉ、」
『カス』
「あ?」
相も変わらず突然現れたスクアーロは、告げられた聞き覚えのない単語に眉を潜めたが、俺の手元の本を見て、ああジャッポーネのかと呟いた。
スクアーロは日本語を習得していない。このあいだヴァリアーに入ったこいつは、まだ中国語の入門で手一杯だ。
『鮫』
「same?」
「“squalo”のことだ」
自分の名を聞いてスクアーロは訝しんでいた目を輝かせた。
「俺はサメかぁ!じゃあ“libro”は?」
『本』
「“notte”」
『夜』
覗き込んでこようとするスクアーロに漢字を見せてやるように本を見せると、一字だけで表せるのかぁと感心しているようだ。
きらりとスクアーロの髪が輝いた。
見上げると、開け放していた窓から月明かりが部屋の一部へ零れている。
『…月』
「…もしかして“luna”かぁ?」
「眩しいな」
低く出る月は異常に大きく見える。
それが満月だったりすると、恐ろしいほどに。
美しい。
「あぁ、今夜はツキが綺麗だなぁ」
日本語の、なんと美しきこと。
『愛してる』
うつくしいよる
***
日本語の美しさについて考えてみた。挫折した←
ボスは日本好きだといいな!
とりあえず和食は好きだよね笑
*月がきれいですね=愛しています
title/にやり