NOVEL

□ご主人様って言ってみな
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※二万打記念
※執事パロ
※『歯をくいしばれ』の続き?



「なぁザンザスー、これなんだあ?」

クローゼットの整理をしていたスクアーロは、ふと衣服の一つを指差して主人を省みた。

「口を慎めカス」

「…これはなんですカー御曹司サマー?」

そんな彼の態度に、主人は舌打ちをしながら素早く手元の灰皿を投げつけた。日常茶飯事のそれを、執事スクアーロは瞬時に察知し身を屈める。と、そこに向けてさらに主人に投げられたグラスは見事に彼の左手に命中し、グラスは金属同士がぶつかったような鈍い音を発して厚い絨毯に転がった。

「ゔおぉい…痛くはないが、妙に響いて変な感じがするぜぇ…」

「知るか」

中身残ってるのになげたのかよぉ、ゔぉい…袖が酒臭いぜぇ…。スクアーロは愚痴りながらも白い手袋を外して左手に異常がないか確かめた。握る、開く、隠し武器のナイフは正常に作動するか…
その黒い袖から見えているのは柔らかな肌色ではなかった。いや、一見肌色ではあるが明らかに造り物の腕であった。
スクアーロは義手だ。
とある襲撃事件の時にザンザス、彼の主人だ、を庇い、いくつも貫通した銃弾は命は取らなかったものの彼の左手を奪った。しかし彼自身はそのことを一切後悔していないし、むしろ誇りに思っている。


「パーティーだ」

「…はぁ?」

「パーティーに着る服だ」

聞き返しても尚主語のない返事にスクアーロは首を傾げたが、ようやく意味がわかってきた。先程指差した服のことだ。
ザンザスが、パーティーに行く。

「まじかよ!?」

「冗談を言うと思うか?」

「で、でもよぉ…」

中学を卒業してからザンザスは何回かパーティーに出席したが、毎回見合いの話をされ、そしてそれのまた何回かで暴動を起こしている。毎回それを止めるのは、もちろん彼の専属の執事のスクアーロなのだ。


「文句、あんのか?」

「い、いや…ねぇけど…」


(パーティーなんて、いやに決まってる)


こころなしか楽しそうに礼服のシワを伸ばす主人を見て、スクアーロは少し目線を落とした。



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