NOVEL
□ぐーパンチに一目惚れ
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「ねぇねぇ、スクアーロ」
「なんだあ?」
待機していた部屋に、スクアーロと例の二人が入ってきた。
「聞きたいことがあるんだ」
「ゔぉおい、なんだぁ、改まって」
ギシリ、とザンザスの背後のソファーが鳴る。三人がソファーに座った音だ。
近い。
柄にもなくザンザスは胸が高鳴ってきた。
実は気になっていたのだ。なぜ8年も待っていられたのか。自分を、愛していると言うのか。
「あのさー、スクはなんでボスが好きなわけ?」
「…本当にどうしたんだぁ?急に…」
「聞いてみたいと思ったんだよ。…例えば、きっかけとかは?」
「そ、そう…だなぁ…」
普段は聞くことのない優しい声音だ。無論、自分が厳しく当たってるからだろうが。
マフィアを脅かすあの大声も、相手が違うとこんなにも優しい。
「…ある意味、一目惚れ、だなぁ」
「ああ、ボスのパーティーで会ったんだっけ?」
始まりはボンゴレ主催のザンザスの誕生日パーティー。
そこに呼ばれていたスクアーロはザンザスを一目見て惚れ込み、何度邪険に扱われようとも何度も会いに行った、とベルフェゴールたちは聞いていた。
(ちょうど十数年前の今日だ)
(あの時はあんなに邪魔だったのに)
(今ではこんなに近くにいる)
最高のプレゼントだ、と、ザンザスは感じた。
こんなにも誕生日を味わった日はない。
こんなにも愛しさに溢れたことはない。
「で?なんで、好きになったの?」
「ああ、…殴られたんだ」
「「…………は?」」
スクアーロは恍惚とした表情を浮かべた。
ベルフェゴールは、これほどこの部屋を寒いと思ったことはなかった、と後に話している。
「え、パーティーで殴られて、え?」
「その拳に惚れたんだぁ」
どこまで馬鹿なんだろう、この鮫は…。と思うのも束の間、二人は近くに隠れている上司のことを思い出した。
背後に忍び寄る禍々しい気配に、頬を赤らめているスクアーロは気づいていない。
「…じゃあ、そのテメェの大好きな拳をくれてやろうかぁぁあ!!」
「ボス!?なんでギャアアアア!!!」
瞬速で繰り広げられている惨劇にベルフェゴールとマーモンは、あれ?今日って何の日だっけ?と思わざるを得なかった。
グーパンチに一目惚れ
(あなたが)
(初めて私に触れたとき)
(happy birthday BOSS!!)