NOVEL

□milk
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※数年後雲了?





本部の玄関で僕が足を止めたのは、決して強すぎる日差しに躊躇したわけじゃない。玄関そばのソファーでその、太陽の男がシャツを捲ったりズボンを捲ったりしていたからだ。



「…なに、してるの」

目の前に立ってじっと見下ろすと、笹川了平は今気づいたようにおぉ、とこちらを見た。

「見てわからんか。極限日焼け止めだ!」

「わけわかんない。つまり日焼け止めでしょ」

「む、そういうことにしておいてやろう」


よくみると、たしかに彼の手のひらにはミルクのような白い液体が乗っかっている。
中学の頃、よく夏の教室で見られた光景だ。僕はあの肌触りとか、匂いとかがあまり好きではなかったな、とつい大昔のことのように記憶に浸ってしまう。


「…君が塗ってるって、すごく変」

よくよく思い出してみると、あの教室でも塗りたくっていたのは女子だった。
しかも、あの笹川了平だ。不釣り合いにもほどがある。

「俺だって塗りたくなんてないぞ。これ、服についたら落ちないしな。…ただ今日は日差しが強すぎてなぁ」

はあ、と笹川は心底嫌そうにため息をついている。
ああ、と急に事態が飲み込めた。
彼の色素不足の体には、このイタリアの日射は強すぎるのだ。
中学時代にも妹からかわいらしい日焼け止めのチューブを握らされていたのを見たし、そういえばザンザスも「イタリアの日光は目に痛い」とかなんとか、サングラスをたまにしている。このぶんだと、彼の次官も日差しには苦労しているのだろう。




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