NOVEL
□きみが骨になった日
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「ボス!」
悲鳴のような呼び掛けと同時に衝撃に体を薙ぎ倒された。血液が顔面に飛び散る。
重い。のし掛かられてるのだ。しまった。まずい、と思い直ぐ様被さる体を退けようとする。
ずるり。
乗っかった体は抵抗をしなかった。息絶えていた。かかった血はこれのだった。いや、本題はそれではなかった。これは。いや、こいつは。
「…ス、クアーロ?」
虚空を見つめたその目は。血のまとわりついたその髪は。俺に捧げたその腕は。
紛れもなくお前だった。
左腕にくくりつけられた長剣は、敵方の剣士(隠密だろうか。気配は未だに弱小である)の腹に深々と刺さっていた。また、スクアーロも然りだった。
相討ち。いや、違う。一対一であったらスクアーロは必ず無傷だった。間に合わないかもしれない、咄嗟にそう思ったのだ。殺したとして、それでも敵の勢いが止まらなかった時その剣は俺に届いてしまうだろうと判断した。その結果だ。
俺がこの剣士に気づいていれば。
警戒していれば。
甘い考えなど持たなければ。
俺が変わってしまわなけれ、ば
その口が、今にも動いて俺を責めるような気がして、
その目が、俺を恨ましげに見ている気がして、
急いで瞼を閉じてやった。
いやに静かだった。
どくり、どくり、と
俺の鼓動だけがやけに耳についた。
そうだ。
アイツに。
アイツなら。
何分、いや何時間停止していたか知らないが、ふと脳をよぎった考えに操られるように俺はジャケットから携帯を取り出した。
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