GIFT
□臆病者の恋
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『アンタの怒りに惚れた』
お前はいつもそう言う。
8年前も、現在も。
その言葉がどの意味合いなのか、俺は未だはかり知れずにいるのだ。
信じたくはないが、俺はお前がその口を自分で開くのを待つしか出来ない、臆病者。
臆病者の恋
「ボスボス!アンタの好きなジェラートの店、近くに支店できたんだぜぇ!」
カラフルな紙切れをぴらぴらさせながら騒がしくやってきたのは、もちろん次官のスクアーロだ。他ならぬ俺の第一の部下である(これこそ信じたくもないが)。
俺に知らせにきたというよりは、自分が行きたいのだろう、目が爛々と輝いている。
第一、俺はそのジェラートは嫌いではないが好きでもなかった。気に入っていると見えたなら、そこがスクアーロと初めて入った飲食店だから、だ。
これお前好きそうだよなあ、あ、これも旨そう、とぶつぶつ呟きながらチラシをじっと見つめるようなスクアーロを見られるのは俺だけだ。
俺はこいつにとって『特別』なのには違いあるまい。
昔からそうだ。
俺が訓練をするとき、会議で暴動を起こすとき、こいつは俺に他の誰にも向けない、俺にしか向けない眼差しをする。
「…行きてぇか?」
「いいのかぁ!?」
その言葉を聞くや否や物凄い勢いで俺を見たその笑顔も、俺だけのものだろう。
(なあ、どこまでの『特別』だ?)
(主従?)
(友情?)
(それとも、)
「ゔおぉい!やっぱりこの店のは格別だぜえ」
早速その日の午後に町へ繰り出た俺たちは、開店早々の清潔感のある店の店先のベンチに腰を掛けてジェラートに手を掛けた。
「ん?ボスってそんなガッツリ食ってたか?」
ふとスプーンの手を止めてこちらを見たスクアーロは首をかしげた。
ガッツリ、というのは、俺がスプーンを使わずに直に食べていることだ。
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