一日一文

創作意欲&萌えの持続を目的とした雑多短文置き場。

※カップリング物限定
※取り扱いジャンル外も無節操に投下
※地雷のある方はカプ名を見た瞬間に視線を逸らす等の自己防衛をお願い致します

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◆太敦 

一日中しとしと降り続く雨のせいか、事務所の中には心持ちのんびりとした空気が漂っていた。
書類整理を手伝っている敦は窓の外に目を向ける。どんよりとした雨雲の下、行き交う人影は少ない。急な飛び込みの依頼などは来ないだろうと思いつつ書類整理に戻ろうとすると、不意に腰に何かが巻きついた。

「うわ!」

体勢を崩しそうになったが、巻きついた物がしっかりと敦の体を抱き止める。何事かと眼下を見下ろすと、椅子に座った太宰が敦の腹に顔を埋めるような形で抱きついていた。

「太宰さん…?」
「んー」
「体調が悪いんですか?」
「んー…」
「どこか痛いとか?」
「んんー」

どうにも要領を得ない返事に呆れて溜め息をつきつつ、敦は太宰のふわふわした髪を優しく撫でる。

「書類整理が終わったらいくらでも付き合いますから、少し待ってて下さい」
「……ん」

ぐりぐりと敦の腹に頭を押しつけてくる太宰の姿に、ありもしない母性本能がくすぐられているような気がして、敦の胸の中が甘ったるい気持ちでいっぱいになる。ふわふわの髪に軽く唇を落としてから、見た目よりもずっと逞しい肩を抱き返した。
この一連の流れを見たくもないのに見せつけられた探偵社メンバーは、胸焼けや吐き気を訴えてさっさと退社した。

2016/11/27(Sun) 15:31 

◆トリコマ←息子 

※未来捏造




小さな手から生み出される素晴らしい料理の数々を、幼い頃から見続けてきた。
凡庸でありながらも優しい笑顔を向けて、召し上がれ、と言われる瞬間が何よりも好きで、皿を空っぽにした後に何度もお代わりをねだる。彼の方も心得たもので、次から次へと料理を作ってくれた。
自分にとっての『おふくろの味』は、母の手料理ではなく、彼──小松が作ってくれる料理だった。世界中に名を馳せる料理人である小松の料理を、ほんの子供の頃から……それこそ生まれた頃から口にしていたのだから、当然と言えば当然の事である。
料理だけではない。小松のおおらかな優しさは、いつも自分を包み込んでくれた。基本的に放任主義な両親に代わって、見守り、慈しみ、支え、育ててくれた小松は、両親以上の存在だと胸を張って言える。そして、もう自分は子どもじゃない。今度はオレが小松を守る番だ。

だからこそ、まずは伝説と呼ばれている親父を追い越す事から始める。小松のコンビであり、小松が誰よりも大切に想っている親父を、オレは越えてみせる!


「小松、待っててくれよ!」
「え…?な、何を?」




【トリコの息子と小松の話】

2016/11/25(Fri) 22:32 

◆ミカ優 

※会話文




「優ちゃん、しりとりしよう」
「いきなりだな…」
「負けた方は勝った方の言う事を何でも聞くって罰ゲーム付きとかどう?」
「ふぅん……まぁいいけど」
「じゃあ優ちゃんの『ゆ』から……雪」
「き……キノコ」
「好意」
「……石」
「仕草」
「……サイ」
「芋虫」
「……醤油」
「優ちゃん!」
「………」
「………」
「ミカ、お前の負けだぞ」
「そうだね。じゃあ、優ちゃんの言う事なんでも聞くよ。何して欲しい?肩叩く?マッサージする?お風呂で背中流す?添い寝する?」
「とりあえず鼻血を拭け」

2016/11/23(Wed) 15:37 

◆出勝 

※未来捏造




段ボールいっぱいに詰め込まれた手紙のうち、薄いピンク地に花柄の封筒をつまみ上げる。乱暴に封を切り、便箋に綴られたあからさまに熱を帯びた文面に目を通してから、くしゃくしゃに丸めて床に放り投げた。
毎日のように届く手紙は、どれもこれも似たような内容だ。ファンレターというよりラブレターと言った方がしっくり来るような、一方的な恋愛感情を押しつけてくる女達の醜さに吐き気がする。下らない。実に下らない。この女達が熱を上げている男は、柔和な笑みを浮かべて女達に接する男は、これっぽっちも彼女らに興味など抱いていないのだから。
男がじりじりと焦げるような執着を見せるのは、今も昔も、これから先も、ただ一人だけ。だから、勝己は顔も名前も知らない女達に向けて告げてやる。


「……デクなら俺の隣で寝てるぜ」

2016/11/21(Mon) 15:31 

◆黒ファイ 

※日本国永住設定
※元ネタ:『彼方から』






──……来るか?

そんな彼らしいぶっきらぼうな言葉に一も二もなく頷いて、共に日本国に腰を落ち着けてから半月が経った。
知世姫から『お祝いの品』として与えられた屋敷で、ファイは今日もせっせと日本国の言葉を勉強している。モコナがいなくても言葉が通じる道具なら用意できると四月一日に告げられたが、丁重に断った。道具を使わず、自分の力で黒鋼の国の言葉を覚えたかったからだ。そう口にすると、黒鋼はそっぽを向いてファイの髪をくしゃくしゃと撫でてくれた。
二人の帰還を快く迎えてくれた知世姫や天帝、蘇摩達の助けもあってファイは周囲の人間が驚くほどの速さで言葉を覚えていった。次々と新しい言葉を覚えるのは楽しかったし、黒鋼に「頑張ったな」と誉めてもらえるのが嬉しくてたまらなかった。だからこそ黒鋼をもっと喜ばせたくて、ファイは町の人々の言葉だけではなく立ち居振舞いや仕草を注意深く観察した。
近所に住む新婚の妻が夫を出迎えた時に、聞き慣れない言葉を口にしていたのをたまたま目撃したファイは、これだ、と柏手を打った。妻の言葉を聞いた夫は幸せそうに微笑んでいて、きっとあの言葉は一日中働いていた相手を労う最大級の言葉だと確信する。
かくしてファイは、屋敷に戻ってきた黒鋼を出迎えて、覚えたばかりの言葉を笑顔で告げた。


「ごくろーさまでした、あなた」


黒鋼はその場に倒れ伏した。

2016/11/19(Sat) 14:49 

◆ヤミフィン 

ヤミの部屋には真っ白なキャンバスや絵筆など、多数の画材がある。その中でも群を抜いて多いのがスケッチブックだ。
このスケッチブックの中身を知る者はたった二人。一人は勿論ヤミ本人。もう一人は、スケッチブックに描かれている人物だった。


「ヤミさん……それ、いい加減にやめてくれませんか」
「あ?オレの楽しみを奪う気か。いいから黙って転がっとけ」
「ううう……」

ヤミのベッドの上でシーツにくるまっているフィンラルは、真っ赤になった顔を枕に埋める。ヤミはニヤニヤと笑いながらも真剣な眼差しで、フィンラルの姿をスケッチブックに描き続けた。

2016/11/18(Fri) 23:56 

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