04/29の日記

18:35
針雨(双子女子高生パロで圭影出会い編 )
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とうとう音子がやっちまいました、柏崎双子女子高生パロディ圭影出会い編です。自重なんて、しないよ?←

女子高生パロディの影崎は魔法使いを裁く魔法使いとしての仕事をしていない為、通常より若干人間らしくなっております。双子なのに別姓という事実から察せられるように家庭が色々複雑らしいので、歪んではいますが。
乙女な影崎さんが許せない方、勇気ある一時退避を。少女な影崎さんが許せない方も。あと微グロ注意です。にょたで女子高生でグロが入る自分にびっくり。


では、上等だぜうへへへへ、にょたざき! にょたざき! な方はスクロールプリーズ。←











石動圭には誰にも知られたくない秘密が二つある。
一つは、姉にポーカーで負けて撮られた女装写真(隣には同じく女装した銀髪の幼なじみが写っている)。
そしてもう一つは、今どき雨の日に捨て犬を抱き上げる少女に惚れてしまったことだ。







針のような雨が降る日だった。
冷たい冷たい針のような。



かといえ圭は傘を差していたから、雨に刺されることもなく家路をなぞっていた。折り畳み傘を鞄に入れておいて正解だった。もし傘が無かったら、それはもう悲惨なことになっていただろう。

そう丁度、あんなふうに。

制服から察するに、自分と同じ学校の女生徒らしい。圭の角度からはよく顔が見えないが、烏の濡れ羽色の髪が強く印象に残った。実際少女の髪は濡れていた。髪だけではない、制服も肌も、きっと靴の中さえも、濡れに濡れた少女が歩いていた。
そう、歩いていた。普通女子高生というものはあんなとき、親に車で迎えに来てもらうか、きゃーきゃー言いながら駆けていくものではないのか。少なくとも、圭の知る女子とはそんな生き物だ。
しかしどうしたことか、少女は実に潔く濡れている。雨など見えぬとばかりに、ごく普通に歩いている。諦めたのか、それにしても鞄を頭に乗せるくらいはしないだろうか。
あれではまるで、自分の身体など別にどうでもいいとでも思っているかのようではないか。

その奇異に、視線は勝手に少女を追う。歩幅のせいか、距離が近付いていることにも気づかずに。

と、少女の歩みが止まった。
理由はすぐに知れた。空き地に、恐らく少女の視線の先にあるであろう、濡れて色を濃くした段ボールがあった。何か文字が書いてあるようだ。捨て……犬か、猫か。ここからは中が見えない。
圭のアパートの規則では動物は飼えないし、実のところ圭はその規則に感謝さえしている。こんなとき、見捨てる言い訳になるから。

少女はごく自然に、その段ボールこそが自宅ですと言わんばかりに、それに歩み寄った。そして特に何か考える様子もなく、当たり前のようにその中身を抱き上げる。

何か少女漫画みたいな展開だな、と圭は思った。
少女に感心するでもなく、自分を恥じる訳でもなく、ただ純粋にそう思った。
これで俺が惚れたりしたらありがち過ぎて笑えるな、とも。それは、まず有り得ないだろうという確信があるからこその考えだった。

苦笑と共に圭は、抱き上げられた犬だか猫だかを見つめる。ただ単純に、犬か猫かを知りたいだけで。

それはどうやら、犬だった。

腐った手足は千切れかけ、皮はずれて、骨は覗いて、肉は崩れて、血は滴って、目は濁って、蝿がその周りをたかる、そんな犬だった。

「……、」

圭は咄嗟に唇を噛む。そうしなければ声が出てしまいそうだった。死んでいた。どうしようもないく死んでいた。圧倒的な程の死が、生々しくそこにあった。
が、それ以上に圭を戦慄させたのが、女子高生がそれを見た上で、何の躊躇いもなく抱き上げていた、という事実だった。

少女漫画云々のことはとうに脳内から吹き飛ばされていた。醜く腐った肉塊に対する嫌悪感すらも遠かった。ここに至って漸く、圭は少女の異質の真髄を悟ったのだ。
いったいどれだけの女子高生が、いや一般的な感性を持った人間が、少女と同じことを出来るだろう。

絶句する圭をよそに、少女は空き地に転がっていた錆びたスコップで、穴を掘り始めた。深く、深く。針の雨に刺されながら、長い時間をかけて。簡単なようだが、少女の細腕にはそれなりの重労働だろう。

圭はずっとその様子を見ていた。視線が少女のちいさな背中に絡め取られて逃げ出せなかった。
その間、圭が何を思っていたのかは、後の彼自身にも分からない。ただ傘を打つ雨の音と、淡々と土を掘る音だけが、耳にこびりつくこととなる。
そして犬を穴に横たえ、埋める。それも終え、少女の動きが止まった。達成感に酔っている訳ではなかろうと、圭は何となく察することができた。ならば何故、と思考が進んだ、その瞬間。

少女が振り返って、圭を見た。
それがあまりに当然の流れのように行われたから、圭は驚くことさえ忘れ、ただ初めて見る少女の顔を見た。
笑うでもなく。
泣くでもなく。
無表情。
無感情。
人よりむしろ、この雨に近いのではないかと思わせるほど、どうしようもなく欠けた。
今日からではない、ずっと前から、冷たい雨に刺されて同調したような。
そんな、少女だったのに。
圭は何故だか、途方に暮れているのだな、と感じた。


「お訊ねしたいのですが」


道でも聞くような声だった。
事務的なような、切実なような。

「墓を作った後は、どうすればいいのでしょうか」

雨の中でも、不思議と通る声。高すぎず低すぎず、平均的という最上の声。
濡れて黒さを増した髪が、少女の病的に白い肌を一層白く見せた。それは、体温が著しく下がっていることも関係しているだろう。それでも震えぬ声だった。

「死体は埋葬するものと聞いたのですが、その先は知らなくて」

「……祈れば、いいんじゃねぇの」

辛うじて紡いだ拙い返答を、少女は馬鹿にするでもなく受け止める。

「……いのる、……」

鸚鵡返し。
異国の言葉を聞いたように。
そして少女は、こてり、と首を傾げた。


「いのるとは、どのようにすればいいのですか」


ふざけているとは思えなかった。
この少女がふざけることなど出来るはずがないと、何故だか圭は確信していた。

「……目、瞑る、とか……?」

すると少女は素直に目を瞑る。そうするとどこか幼く見える少女であった。

「いや俺じゃなくて、犬の方向いて」

即座に少女はくるりと方向転換する。濡れたスカートが重たげに揺れた。
勝手に足が動いて、圭を少女の隣へ運んでいた。無防備に目を閉じた横顔は、長らく雨に打たれたせいか、蒼白い。そのくせひとかけの苦痛すら見当たらない。

「それから?」

促す声に、圭は必死に答えを探す。

呑まれていた。
圭は、自分よりちいさい少女に呑まれていたのだ。
汚れた手を洗うより先に、祈ろうとする少女に。

「……こいつが暢気に寝こけられますように、とか、思う」

「……、」

少女の顔が僅かに強張る。見知らぬ男の前で無防備に目を閉じるより、それは難しいことらしい。

「……それから?」

「……手でも、合わせとけば?」

そう言うと、少女は目を開いて自分の両手を見つめる。
血と、腐敗液と、土とにまみれた、手。
困ったように、少女はこてり、首を傾げた。






「汚れた手でも、合わせていいですか」







雨が降る。
雨が降る。
遥か彼方に降っている。


その、当たり前のように紡がれた言葉に。ただ純粋に疑問符を浮かべる黒い暗い深い瞳に。




圭は。







かり、と音がした。






胸の内から、何かひどく飢えた生き物が引っ掻く音。


かり。

かり。

かりかりかり。


小さい、けれど雨の音など掻き消すほどに、それは揺さぶる音だった。







「汚くねぇよ」



荒ぶる感情が声に出ていた。
強く、強く、揺さぶられて、瞬間的に真っ赤に熱された感情を、さらけ出してしまわないと熱くて気が狂いそうだった。


「汚い訳ねぇだろが」


乱暴な言葉遣い。脅すような声。相手は自分より小さな少女。最低だ、と我ながら思う。

それでも。

「ですが、」

「汚くねぇっつってんのが分からねぇのか馬鹿」

「はあ」


圭は少女の言葉を、肯定する訳にはいかなかったのだ。
例えそこに憐憫も哀悼もなかったとしても、ただ単に知識にある行為を実践してみただけだとしても。
躊躇いなく汚れられるという彼女の異質に、圭は、惹かれてしまったから。

だから例え世界のすべてが少女の言葉を肯定しても、圭は、圭だけは、否定しようと思ったのだ。




「お前、きれーだよ」




瞬間。
ぴたり、と少女が爪の先まで停止した。針の雨に縫い止められたように。
目が若干見開かれている。純粋な驚愕。そんなことを言われる日が来るだなんて、思ってもみなかったとでも言うように。俺も初対面の女にこんなこと言う日が来るだなんて、思ってもみなかったよ畜生。

重苦しく横たわる沈黙。
視線は雨に阻まれる。
それでも確かに、繋がって。


「……、はあ」


大分遅れて、少女は理解できないという風に、声を漏らした。空っぽだった瞳に、薄く浮いた戸惑い。僅かな僅かな、きっと貴重な感情の発露が無性に愉快で、圭は思わず笑う。訝しげな少女の視線がまたおかしくて堪らない。


暫し困惑するように立ち尽くし、少女は思い出したように土が新しくなった部分に向き直る。少し躊躇い、それから、手を合わす。圭の笑いが止まる。目を閉じる。圭の呼吸が止まる。


汚れた少女がただ祈る。
冷たい雨に打たれながら。
手も制服も赤黒く汚した年頃の少女が、それを気にも留めずに。
真摯すぎて、いっそ痛々しい少女だった。
純粋すぎて、いっそ無惨な少女だった。
綺麗すぎて、いっそおぞましい少女だった。
それでも圭は目を逸らせなかった。逸らせる筈がなかった。いや、逸らせてもらえなかった、と言うべきか。
その瞬間圭は、自分がどうしようもなく拘束されたのを感じたのだ。それを不快と思うことさえ出来ないような、強い、強い拘束。その意味するところを、圭はまだ知らない。
ただ、憑かれたように少女の背中に歩み寄り――後ろからそっと、傘を差した。
誰かに見られたらとか、自分が濡れるとか、そういった思考は何故か撥ね付けられて、ただ静かに。この神聖でさえある空気を壊してしまうことだけに怯えながら。

無心に祈る少女は雨が途絶えたことにさえ気づかない。そのことに圭は心から感謝した。この雨に汚された静寂が、貴く思えてならなかったから。


針のような雨が降る日だった。
冷たい冷たい針のような。

そんな雨が、何処か遠くに降る日だった。



ごまかさないで
あなたに落ちる
冷たい雨を嗅ぎ分けて
両手を空に翳しているから
あなたに咲く菩提樹

天野月子「菩提樹」










天野月子さんの「菩提樹」は、私が初めて圭影っぽいと思った曲です。双子女子高生パロの圭影イメージソング。
影崎さんを「少女」と表記する度ににやにやしました。白状します、書いてて超楽しかった。←
……今度こそ引かれた、かな。うん。

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12:04
晶お姉さまに私信
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メルレス有難うございます!! だ、大丈夫ですかそんな、こんな阿呆の戯れ言に付き合うより御休みになってください!!

勿体無いお言葉を有難うございます。私はまだお姉さまに誇れるような人間ではありませんが、お姉さまに誇ってよいと言って頂けたことは、何より誇りに思います。

や、優しさ!? あの電波メールに!? 優しさというなら晶様のメルレスこそが優しさでしょう。
だって、私は、泣きました。
私を誇っていいのだと仰って頂いて、泣きました。ぼっとぼと泣きました。今まで私に嫌われていた私が頭を撫でて抱き締めてもらったようで、泣きました。
メルレスを頂いた夜は胸の辺りを痛いほど押さえながら泣いて、いつの間にか寝ていました。見た夢は覚えていません。いい夢だったことはぼんやり覚えています。
……何かこれこそ電波な文でごめんなさい。無視して頂いて結構です。引かれてしまったら申し訳ありません。
要約しますと、私はお姉さまに救われて、感謝していて、大好きだということです。
……何でお姉さまはいつも、私が弱ってるときを狙ったように優しい御言葉をくださるのでしょう。さてはエスパー?

よ、呼び捨て……!? そ、そんな、日記の内容から察するに私、年下ですよ!?
むしろこちらこそ呼び捨てしてやってください!!
私ももっとお姉さまと仲良くなりたいです。
こちらこそひねくれすぎてねじ切れた人間ですが、どうかよろしくお願いします。

では、失礼します。
……というか具合悪いのにこんな日記見ていていいんですかお姉さま!? どうか、どうかご自愛を!!

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