04/17の日記

23:53
廻り来るなら次は我が手に( 圭影小話続編)
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まず、硬直する。これは確かだ。問題はそれからだ。
爆笑するか。それとも硬直し続けるか。
いずれにせよ、希少価値の高い兄弟子を見れることは確かだ。

圭は面白い見世物の予感ににやにやと笑いながら、アストラルの呼鈴を鳴らした。横目でちらりと影崎の頭を確認し、吹き出しそうになるのを何とか堪える。心底不思議そうな影崎の顔がまた、圭の腹筋を引きつらせた。

そして軋む音を立て扉が開く。出てきたのは、期待通り件の兄弟子。


「はー……、……い?」


予想通り、まずは硬直。
さてどう来るかと圭が密かに笑んでいると――猫屋敷は、震えだした。


「……認めませんから」


絞るような、声だった。
滴るような、声だった。
憎悪ではあまりに生ぬるい、怨恨でもとても足らない、言語の限界を越えた処にある振動が、猫屋敷の喉で澱んだ。

「……認めません……認めません、から……うふ、ふふふふふ………」

ついにはかたかた笑いだした兄弟子を、流石に異様と思ったか、単にその迫力に怖じ気づいたか――圭は、そろりと一歩退いた。

「……おい、猫屋敷?」

恐る恐る掛けられた声に撃たれたように、猫屋敷が停止する。かと思えばわなわなと手を震わせ、並んだ二人を睨み付け、猫屋敷蓮は絶叫した。

「お似合いだなんて、お母さん認めませんからねッ!!!!!!!!」

そのまま和装を優雅に翻し、凛と背中が遠ざかる。荒い足取りが古びた床を嘆かせた。それを呆然と見ていた圭に、影崎が尋ねる。

「石動さんは、猫屋敷様の御子息でしたか」

「断じて違う」

取り敢えずそれだけは確かに否定してから、圭は事務所に入る。猫屋敷の妙な反応も気になるが、一応仕事で来たのだ。
珍しく静かな事務所。学生は学校なのか、黒羽だけが慌ただしく紅茶の準備をしていた。

「あ、今紅茶を……あれ?」

気付いたか、と圭の口端がつり上がる。今度こそまともな反応が欲しいところだ。まあ、この少女に限っては、普通に指摘して終わるかもしれないが。

黒羽はぱちくりとまばたきを一つして、それから、軽く吹き出すように笑った。予想通りの、まともな反応。
しかし、黒羽は不可解な言葉を続けた。


「あはは、似た者同士さんですね」


圭は首を捻る。
影崎は首を傾げる。
その拍子に。
全く同じタイミングで、二人の頭から――ひらり、と花が舞い落ちた。











前回の続き。蛇足とはまさにこのこと。
書くかどうか迷ったのですが、褒めていただいて調子乗りましたこいつ。すいません、超嬉しかったです。
一応タイトルは繋げると短歌。上の句だけだと俳句にもなる。一応文芸部員なんで、たまには気取ってみる。

似た者夫婦な圭影。コンセプトは 「犬は飼い主に似る」 。←
さて、どっちが犬か。

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