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□失わなくてはならない君
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あの日、僕は初めて本物の神様を見つけたんだ。
今でも鮮烈に僕の頭に焼きついたままはなれようとしない。もしかしたら単に女々しいのかも判らない。
でも、神様を見つけた一番最初は僕なんだって僕は今でも信じてる。
もうすぐ消えてしまう僕の神様。
だから僕は、あの日吐いた最初で最後の嘘を今吐露してやろうと神様に布告する。
「僕、今まで貴方に黙っていた事があるんです」
勿論わざと、重たくて低くて含みを持った声で言えば、神様は興味津々、そんな顔色で僕を見つめ返した。
大きすぎる対色の瞳に長すぎる睫毛がやけに僕の心臓を殴りつけるから。
バクバクバクバク。
嫌だ。なんて五月蝿いんだろうか。
「嘘、吐いてました」
それを悟られないように僕はゆっくりと言った。
「どんな嘘ですか?」
愉しそうな顔をした神様が訊いてきた。
「知りたいですか?」
なんて、ちょっとだけもったいぶってみたり。
「クフフ、今日は随分と高圧的ではありませんか」
「良いでしょ骸様?今日は素晴らしい日なんですから」
悔しいのは、そう言えば少し恥じらいを見せるこの人の素直過ぎる姿。
ううん、悔しいよりもきっと哀しいの方がずっと正しい。
この想いの大きさはきっと僕の方が勝っている。…なのに、一体どこで違えてしまったのか僕には判らない。
笑わないで。
僕の神様はもうすぐ消えてしまうのだと実感するから。
そう、僕の神様はもう消えてしまったんだって。
「僕、幸せになって下さいって骸様に言ったけど…あれは嘘。幸せになんてなって欲しくない」
…そんなに悲しい顔。
どうして?貴方はもう消えてしまったくせに。
「だって僕の方がずっと貴方を幸せに出来るから」
「…グイド」
「嘘。初めて吐いちゃった」
神様を見つけた。
ただそれだけで充分な筈だったのに。
無恥で強欲な幼い犯罪者は神様に想いを寄せてしまった。報われる事のない虚しい想いを。
なんて滑稽なのか。
なんて苦しいものなのだろうか。

僕の神様、貴方は今幸せですか?

「僕は今幸せですよ」
…、知ってる。だって貴方はもう飛んで行ってしまったから。
「ふふ、こんな言葉僕には許される筈がないのに」
僕を置いて消えてしまったくせに。
「グイド」
狡い。そんなに悲しい顔をしないで。
「貴方は僕の神様だから」
「え?」
「幸せになって、今度は…今度は嘘じゃないからっ!」

さよなら僕の神様。

「ありがとうグイド」

僕の神様が笑って、
僕の神様が飛び去った。


END
お題
「液体窒素と赤い花」様

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