達央

□Connect 2
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「たつ、おいしい?」

「あ、うん。」

「良かった。」

「あ、えーっと、コレ。これ美味い。なんか、すげー好みの味付け。」

「そう。良かった。」

「ん。・・・ありがと。」

私、顔面には出しておりませんが絶賛悶絶中です。

有言実行だね、たつ君。

ツンデレのデレの威力って半端ないなぁ。




喧嘩というか危機、みたいなのがあってから、たつがとても優しくしてくれる。

別に今までだっていつでもずっと優しかったのだけれど。

っていうか、優しいから嬉しいっていうより優しくしようって頑張ってくれていることがもうたまんない。

だって、たつのやり過ぎってくらいの意地悪も好き、だし。

言い過ぎたって思ったら頭ガシガシ撫でながら照れくさそうに「まぁ、ちょっと調子乗った。」ってそっぽ向いて言うのとかぎゅってなるの。

それでも少し前の私は仕事が忙しかったりで擦れ違いが続いて不安になった。

なんだかお互いにうまく回らなくなっちゃって。

たつは私じゃなくてもいいんじゃないのかなって思ったりして。

電話の回数とかメールの回数がだんだん減っていって、そうしたら自分からするのが怖くなった。

会っていたってあまり会話も弾まなくなった。

前は何してても体をくっつけていたのに。

隣に座るか背中合わせにしてくっついてたのに。

一緒にいてもたつが誰かとメールしてたりするのが辛かった。

誰としてるの?

だったら私にも送ってよ。

その指で昔のように頭を撫でてよ。

もう私のこと好きじゃないの?

ねぇ、私を離さないで。

どうしてなの?

私ばかり貴方のことが好きなの。

好きで、大好きで、それなのに好きって言ってくれないたつが私を苦しくさせた。

意地悪で言わないんじゃないもの。

本当の本当にもう私は要らないのかも知れないって不安だった。



居酒屋の裏道の薄暗い場所で後ろから求められて怖かった。

けれどたつが私を欲しがってくれていることが嬉しくもあった。

それなのに、好きじゃなくても抱けると言われていろんなものが音を立てて崩れた。

だからキスをくれないの?

昔のように頭を撫でて。

髪を梳いて前髪を払って額にキスして。

愛おしむように私の頬に触れる貴方の掌がとても大好きなの。

頬に鼻先に唇に優しいキスを頂戴。





好きじゃなくても抱けるなんて言葉、たつが言いそうな軽口なのにね。

もう、またそういうことばっか言うって笑って流せたはずなのにね。

あの時の私は言葉そのまま鵜呑みにしちゃうくらいぐちゃぐちゃだった。

その後も何度も求められて、体だけなんだって思った。

それでも離れたくなかったから受け入れようと思った。

体だけでもいいから私を愛して欲しいの。

キスをくれなくても私を好きじゃなくても体だけでもたつと繋がっていたかった。

でも本当は苦しかった。

苦しくて苦しくて勝手に涙が溢れた。

やがてろくにご飯が食べられなくなって。

眠れなくなって。

日々の仕事をこなすだけで精一杯だった。

鳴らない電話を見るだけで吐きそうだった。

「別れよっか」

抑揚のない声であっさりと切られた。

あぁ、体もダメになっちゃったんだ。

どこもかしこも全部もう要らなくなっちゃったんだ。

絶望した。

でも温かい腕で力強く抱きしめられて「好きだ」と言われた。

嫉妬したと言ったたつが可愛かった。

無理やりしたと後悔しているたつが愛しかった。

これからは好きっていっぱい言ってくれるんだって。

キスもいっぱいしてくれるんだって。

結婚しようって言ってくれた。

私の左手薬指では十分なサイズの石がキラキラと光って存在を主張している。

結婚しようと言ってくれた翌日、無理やり時間を割いてジュエリーショップに連れて行ってくれた。

次の休みには私の家族に「ご挨拶」に行ってくれるんだってさ。

あんなにどん底だったのに今は幸せ過ぎてふわふわしてる。


「ごちそうさま。」

「早いよ。」

「・・・ちゃんと噛んだもん。」

子供みたいなこと言わないでよ。

「貰い物のドーナツあるけど食べる?」

「食う。・・・けど、雛姫が飯終わるの待ってからにする。」

「そう?じゃあ早く食べるね。」

「バーカ。ちゃんと噛めよ。」

「うん。」

「ちゃんと待ってる。」

そう言う声も微笑む顔も優しかった。

向かい合わせで座っていたたつが私の座っている椅子の右側、わずかに空いている隙間に座り直す。

「あ、左側にして。」

「ん?あー、箸あるで?」

「そう。」

いくら私が右側いっぱいに移動したって一人掛けの椅子に大人2人が座ったら当たり前に狭い。

それでも私は右側いっぱいに体をずらすし、たつも椅子の後ろを回って言われた通り左側に移動した。

たつがここに座ったって、私は目の前の食事をもくもくと味わうだけなのに。

たつだって私に構うことなくいつものようにタブレットを弄るだけなのに。

そんなの部屋中のどこでだって出来るのに。

私たちは体のどこかをぴったりくっつけていることが当たり前だから。

狭い、食べ辛い。

でもいいの。

繋がっているところから好きが伝わるの。

このぬくもりがずっと恋しかった。

ずっとずっと足りてなかったの。

「雛姫ー。」

「なぁに?」

「俺ね、お前が・・・」

「・・・うん。」

「すげー好き。」

ねぇ、こっち見て言ってみて。

私の瞳を見つめながら言ってごらんよ。

ううん、違うな。

やっぱりいいの。

これがいいの。

タブレット見ながらね、天気の話やテレビの話と同じトーンでね、たくさん好きって言って。
照れてるくせに全然そうじゃないフリをして言って。

だってこっちの方がたつらしい。

私の好きな貴方らしい。

「私も、好きです。」

私はちゃんとたつを見つめながら伝えるよ。

気持ちを込めて、体をくっつけながら好きを言うよ。

だって、ほら。

貴方、赤くなるじゃない。

それをずっと見ていたいの。

貴方に寄り添って見ていたいの。

「・・・雛姫、ごちそうさまなの?」

「うん。ごちそうさまでした。ドーナツ出すね。」

「・・・いい。」

「え?」

「後にする。」

「どうして?」

「・・・抱きたくなった。」

「えっ、あ、そう、なの?」

「だってお前がっ!」

「私?」

「あー!とにかく、お前が可愛すぎるのが悪いの!」

たつは私の背に腕を回して抱き寄せると赤い顔を隠すように私の胸に顔を埋めた。


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