良夜・学園
□シンデレラ
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私立BASARA学園本校が文化祭のリハーサルをやっていた頃。私立BASARA学園分校でも、文化祭のリハーサルが行われていた。こちらも学園有志による劇。演目は、『シンデレラ』。
シンデレラ
「我が君も出られるので、私がリハーサルに付き合うことになりました。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。ククク……」
見守るのは立花と天海。二人は客席に座る。
「これで私が突っ込まなくても大丈夫ですね」
「何か申し上げましたかな?」
「独り言を」
「(我が君、劇とか言うけど演技なんてできるのかな……。心配だよ……)」
「これがありますからね」
沈黙が雄弁に語る立花にツッコミを任せ、天海は覆われた口元をニコーッと笑みに歪めながら座席に深く座ったのであった。
『あいや待たせた。今より劇の始まりよ。しばし我に付き合え』
「あれは……、ナレーションは大谷先生ですか?」
「えぇ。淀みないしゃべりが採用されたとか。ちなみに脚本は鶴姫さんと孫市さんが、配役はくじで決めたそうです」
「(何でここまで知ってるんだろ……)」
ナイスツッコミ。天海は静かに満足する。
『今より巡るは『シンデレラ』の物語。見やれ、時はさかのぼって中世、一軒の裕福な家が焦点よ』
スルスルと舞台の幕が上がる。そこには見事なセットが。
「佐竹先生と宇都宮先生とが頑張ってくれたそうです」
理科教師達の技術の結晶体ということか。そうこうしながらライトアップした舞台に一人のキャストが現れた。
「あぁ、なかなか掃除が終わらないわ。このままじゃお義母様に叱られる……」
みすぼらしい服を来ているが――
「(隠せてないなぁ……)」
「隠せてませんね」
マッチョな筋肉が隠れてない。女物の服にこのマッチョは浮きすぎだ。
「いやー、まさかワシがシンデレラだなんてな。はっはっは」
出ました楽観主義、むしろシンデレラは楽観しないと思う家康がまさかの主役の座を射止めたのだ。かなり女装が似合わない。