宝物

□幻想伝(タイトルなし)
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白麒麟の朝は、極楽鳥の甘いさえずりの声で目を覚ます。
目を擦りながら身体を起こすと、全体的に生成りに塗られた室に光が乱反射している。
格子の側に伸びた枝には、さえずりを聴かせてくれた極楽鳥が小首を傾げながら見ていた。

「鳥さん、おっきぃできたの!ありがとうございます」

毎朝起こしてくれるこの極楽鳥は、去年生まれたばかりの頃に巣から落ちて、怪我していたのを青龍と一緒に見つけて一次保護をした。
しかし雛であったほとんどを白麒麟と青龍で預かってしまったせいか。
それともお礼のつもりなのか、放した毎朝からこうして起こしてくれる。

「はい、どしょ!」

どうぞがまだ巧く舌が回らない白麒麟が、格子を開けると同時に中に入り毎日変えて置かれて水に觜(くちばし)をつけて飲む。
極楽鳥が格子から入ると同時に、扉から青龍が大きな欠伸をしながら入ってくる。

「Good morning.姫、鳥」
「はよ〜なの」

寝台に手をついて腰を下ろす青龍が、そのまま着替えもしていない白麒麟を抱き上げて寝衣をはぐ。
片手に持っていた薄紅の衣を膝の上で着付け、茄子紺腰帯を結び、髪を結い上げる。同じ茄子紺の髪紐がふわりと外の風に舞い広がった。

「うん」

前から横から後ろからと見て、最後には抱き上げると全体的を見て満足して、寝台から下ろす。
極楽鳥はそのまま、青龍の肩に止まるが、これも毎日のことなのでそのまま放置してし、食堂まで直行する。

「おっきいしたの」

食堂では本来であれば、侍従する者の仕事である朝食を、並べている黄龍の姿がある。
割烹着を着たまま、焼いた魚を持って来たのは、もうひとりの春の宮の主である黒麒麟だ。

「おはよう」
「ごじゃーまふ」

皿を持ったまま、白麒麟の頬に唇を寄せると、同じように黒麒麟にかえした。
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