宝物

□決戦
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今体育館では男子生徒達が準備運動を開始している。動く度に館内では上履きの擦れる独特の音が響き渡った。

「…さて…今日は武田のおっさんはいねぇから、自習になるんだが。全員で好きな競技やってろっつう事だ。何かやりてぇもんあるか?」

準備運動が終わった直後に政宗は皆に言い放った。
今日武田信玄は出張で授業に出る事ができない。よって生徒達で好きな事をして1時間過ごして貰いたい、という伝言を残していった。

体育はクラス合同であるため、この時間ばかりは幸村以外のメンバーがそろっている。

「ドッジボールは?」
「あー、それいいかも。」

元親の無難な案に佐助が同意した。他の生徒達も申し分ない様なのでそれに決定しようとした。その時だ。

「はーい。2階体育館でバレーをやってる女子を見に行く!」
「「「1人で行け!!!」」」

慶次の素頓狂な意見。しかしやはり政宗、佐助、長政などから非難の声をあげられ、ちぇー、と特に残念そうでもなく笑って言った。

「あまり派手に動くものはパスさせて貰うよ…」
「あー、そうだな。半兵衛今日顔色悪いし。」
「ところで、ドッジボールで決まったのか?他にやりたいもののある奴は手をあげろ!」

半兵衛が体育館の隅に腰をおろした所で元就が言い放った。特に他にやりたいものは出ず、結局昔懐かしのドッジボールをやる事に決まった。
そこでグループ毎にグーチが始まりチーム分けがされた。
男共がこぞりこぞってグーチをしている様は異様だ。半兵衛はそんな滑稽な状況に笑みをこぼす。

「よし、ボールはバレーとバスケどっち使う?」
「バスケはいてぇだろ、バレーにしねぇ?」
「Ha!男なら黙ってbasketだろ元親!!」
「あぁ!?テメ、怪我したらどうすんだ!」
「Ah?そんなやわはテメェぐらいだ!」
「なんだと!?」
「なんだよ!?」

ボールのどちらを使うかでこの様である。途端に言い争いから胸倉を掴み合い、まるで試合前のプロレスラーの如く額を押し当てあってのガンの飛ばし合いに変貌した。
周りでは佐助達が、また始まったと呆れ返っている。

「あ、じゃあさ!このバスケットボールで、どっちが1点いれるかで勝負したら?勝った方の意見を採用するってルールで。」

すると、使うと思って取り出したバスケットボールで遊んでいた慶次が言い放った。先程の女子の件とは打って変わってのまとものな意見に皆は感嘆の声をあげる。

「それがいいよ。」
「確かに、それならばすぐに決着が着こう。」
「だが、長曾我部は元バスケ部ぞ!勝負になるのか?」

そう、元親は元バスケット部レギュラーだ。これには賛成の意を唱えていた者達も悩み出す。
しかしそんな彼等の前に、話を聞いていたのか政宗が現れた。

「おい!誰がこんなオトコオンナに負けるって!?上等じゃねぇか!貸せ前田!!」
「おっとっと!乱暴だねぇ。」
「あ"あ"!!?誰がオトコオンナだゴルァ!!?」
「Ha!それじゃあ俺に勝って証明してみせろ元親ァ!!」

慶次から強引にボールをひったくった政宗は尚も元親に対して挑発を始める。元親も元親でまんまと挑発に乗ってしまう。そんな彼に元就は、馬鹿め、と呟き溜め息をこぼした。
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