朧夜・長編
□モノに勝りし 9
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『戦装束一式?』
「それが失せた翌日に貴様等が来たのだ。疑って当然であろう。」
改めて対面した二人に疑った理由を話す毛利元就。しかも疑ったことを全く悪びれない。かすがは怒りがたまるのを感じたが、利家は全く気にしていないようだ。
「もう一度言うが、某達は盗みなんかしてないぞ!」
「―――今となっては疑うまい。だが、貴様等には探すのを手伝ってもらうぞ。」
「どうして私達がお前の服を探すのを手伝わないといけないんだ!?」
かすががかみつくと、元就はかすがをギロリとにらむ。
「我の失態を知られたのだ。本来なら殺してくれるところを、命だけは助けてやろうと言うのだぞ。感謝するがいい。」
全くどうしてこうなのか。自分の汚名を隠す協力を無理矢理させるとは。ある意味、とんだワガママだ。
「毛利殿、疑わせたわびだ。探すのを手伝おう。」
そんな理不尽な申し出に利家はのんびりと答える。かすがははぁ、とため息をついた。よくもまぁ受ける気になるものだ。自分一人なら絶対断っている。
「では毛利殿、その戦装束は普段はどこにあるのだ?」
「我の室よ。他に兜と鎧もあったが、装束のみが消え失せた。」